黒子のバスケ

黄瀬涼太

わたしだけにキスして
2019 HAPPY BIRTHDAY

っちの視界の中にいたい


っちの声を常に聴いていたい


っちにオレの名前を呼んで貰いたい


っちが抱きしめるのはオレだけでありたい


誰か一人にこんな事を思う日がくるとは、誰一人として想像してなかったと思う。


「黄瀬の……カノジョ?マジで?」


って驚かれるくらい普通の彼女。


言われる度に苦笑いするっちを、見たくないからいきなり紹介するのを止めた。


まず写真を見せてオレがどんなに彼女を好きなのかを話してからしか会わせないッス。


別に顔やスタイルなんてどーでも良い事で。


【黄瀬涼太】の彼女の職業が会社員の何が悪いのか!って大声で叫びたいくらいだ。


会社の制服を着て仕事をしてる彼女を好きになった。


いつもふわふわと笑っていて、いろんな人の助けとなってる事務員さん。


受話器を持って相手に見えないのに頭を下げちゃう姿とか、マジで今すぐ抱きしめたくなるくらい可愛いし。


「好きです、付き合ってください」


と昼休みになってすぐに突撃したら、「えーと、ごめんなさい」で「なんでっ!?」って思わず声に出してたな~。


女の子に断られるなんて初めての経験だったし。


いや、だからっちを好きになったんじゃなくて!


それから会う事があれば彼女を口説いていた。


勿論、すぐに靡いてくれるはずがない。


「お試して良いから期間限定で付き合って。オレを知らないで断らないで欲しいッス」


三か月経った時に本当に彼女と付き合いたくてお願いした。


苦笑いだったけど「それもそうだね」って三ヵ月って期間限定でOKを貰った。


勿論キスもエッチも無し!


いや~~~~~マジで拷問か!?ってくらいキツかったッス!!!!


っちはオレより2つ年上で、オレの告白も冗談か気まぐれにしか思ってなかったし。


普段から外食とかしないけど、遊びに行けばケチくさくないし。


綺麗な足なのに(H出来るようになって知った)普段はパンツ系かロングのスカートしか履かないし。


一緒に行った店でアンケートに答えたら割引券が届いて「結婚記念日とか登録すれば誕生日以外にも割引券来るかな?」とかリアリストなのにファンタジーとかの映画や本を読んで大泣きするし。


「その泣き顔が可愛い」って言えば「カノジョが鼻垂らしてる姿が良いなんて涼太は変態だ」と涙目で鼻かみながら言い返してくる姿にキュンキュンする!って言ったら殺されそうだから言わないけど。


まあ、早い話がっちが好きすぎて可笑しくなっちゃってるって話なんだけど。


今日はオレの誕生日で一緒に住み始めた1年目の記念日で「犬でも飼おうか」って話の流れからデートでペットショップに来てる。


予想通りっつーか、予想以上にっちはワンコに夢中。


「見て見て涼太!」


抱っこさせて貰ったワンコを見せようと彼女がオレを呼ぶ。


「うわっ!……かわいっ…ちょっ!あはははっ」


ピンクのグロスで艶々した口紅を、ワンコが舐めとっていく。


「あーーーもうっ!」


オレは彼女の肩を掴んで顔を一気に近づける。


「「「「「きゃーーーー!!!!」」」」」


小さなワンコから彼女の唇を奪い返すと、周りで黄色い悲鳴があがった。


「この唇はオレ専用なんだから、他のオトコにキスさせたらダメっスよ?」


唇を離して至近距離でそう言うと、っちの顔が真っ赤になった。


と思ったら「あ、ありがとうございました」とワンコを店員に渡してオレの腕を掴んで店を出る。


「信じらんない」「恥ずかしい」「2度と行けない」などブツブツ言いながら歩くっち。


「そんなに嫌?」


「いっ……その聞き方ずるいよね。TPOを考えろって言ってるの」


「んーでもっちが浮気するから」


「うわっ!?なんで!ワンコだよ?ぺットだよ??」


「それでもダメ」


「なっ!あの子、おんなのっんっ……」


ショッピングモールの大きな通りの階段下で立ち止まって彼女の唇を塞ぐ。


ここなら皆両脇に逃げるから人通りの妨げにはならない。


けれどやっぱり唇を離したら怒られた。





っちがキスして良いのはオレだけだから」


2019/06/04