黒尾編 後編
の感情が浮き沈みが見てとれる。
それだけアイツに感情を揺さぶられてる事に苛立つ自分がいて、自分のバレーにも影響してしまうほど。
シーズン中なのもあり、焦る気持ちを抑えなくちゃならない。
それならばいっそ。
御幸一也も俺の気持ちに気付いている。
それを知った上で俺に見せつける様に送り迎えをしてるんだろう。
それなら乗ってやるよ。
「本当はこのタイミングで言うつもりなかったけどさ、のんびりしてられる状況じゃなさそうだし」
「何?」
「好きなんだけど」
そういえばはめちゃくちゃ驚いた顔をしていた。
それなりにアピールしてたつもりだけど、本人全く気付いて無かったしな。
「俺はとキスもしたけりゃ、セックスだってしたいって好きだから」
そろそろ家族的な立場から脱出しないといけないワケで。
まずは俺のことを男って認識を持ってもらわないと。
ニブいの事だ、ストレートに言わないと通じないだろうと言葉にしたら真っ赤になって呆気にとられてた顔も可愛いと思えた。
高校の同級生である海と飲んだ帰りになんだか喉が渇いて駅前のコンビニでアイスを買った。
暑くもないのにアイスって、どんなけガキかよ!と思わなくも無いが食べたいものは食べたいんだから仕方ない。
アイスを食いながら歩いていると、遠くで車から女が下りたのが分かった。
こんな真っ暗な公園で下ろされても家までまだ距離があるだろう。
男なら友達でも安全な場所で下ろすべきだし、女なら……いや、危ないだろう。
その女に近付くにつれ、泣いているのが分かった。
「?」
背格好が似てるなと思ってたら声に出てた。
驚いて上げた顔は涙でグチャグチャだった。
「なっ…どうした?」
なんて聞かなくてもわかる。御幸一也絡みしかないんだ。
だから彼女を抱きしめ、駅方面に歩いてホテルへと入った。
最初に言っておくと、本当に手を出す気は無かった。
どうせなら相思相愛でベロンベロンに愛し合いたかった。
けれど宥める為に触れた唇が次第に深くなり、拒否されないで受け入れて貰える事に興奮した。
キスをしても応えるし、胸を触っても怒るどころか甘い声が上がるしでブレーキ崩壊。
ユニフォームでスタイルは大体わかるけど、脱がせて分かる事もあって……何度も何度も抱いた。
そして泣いたのとセックスの疲れとで眠るを腕に抱き、もう離せないと思った。
「高校の春高で一目惚れだったんだよな」
「そんな事初めて聞いた」
「初めて言ったからな。好きだ。愛してるって方が合ってるのかな?」
「……ばか」
「馬鹿でも良いや。でもそれって嬉し泣きだよな?」
「鉄朗の前では泣いてばっかりな気がする」
「でも嬉し泣きされてるのは初めてなんですケド」
「初めて鉄朗に泣かされた」
「啼かす方がいいな」
「えっち」
「緊張してるんで」
「鉄朗が?」
「そりゃあ惚れた女と相思相愛になって初めてのえっちなんで」
「なんかその言い方の方が恥ずかしい」
「俺も言っててそう思った」
照れ隠しがてらに顔を近づけると、が目を閉じて頭を少しだけ傾けて重なる唇。
の頭を支えながらベッドへと押し倒した。
2018/10/29
アトガキ
これで本当に完結です。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!