第九話
鉄朗の予想外の告白に驚いた。
なんとなく一也に会いたくなるのは、やっぱり一也が好き……なんだと思う。
だから試合の前に『なんとなくメールしてみた』と入力したメールを入れてみる。
自分でも「らしくない」自覚はあった。
でも一也と話が出来れば考えが纏まる気がした。
けれどそう思っていたのは自分だけで、その考えが甘いと思い知らされる。
試合が終わってから携帯を確認しても彼からの返事は無かった。
けれどモヤモヤした気持ちは晴れず、部屋に帰って電話を掛けてみる。
1回・・・2回・・・・・・・
7回目のコール音が途中で切れ『・・・はい』と一也の声がした。
「あ、私、だけど」
『……ああ、ちょっと待って』
そう言った後にガサゴソ音がしたと思ったらパタンと言う小さな音がした。
『わりぃ。珍しいじゃん?から電話なんて。どうかした?』
「えっと…ああ……たまにはいいかなって」
『まだ読んでないけどメールもくれてたんだな。っつー事は、ぜってー嘘。』
「な、んで・・・」
『一緒にいた時間、甘く見んなって』
「いい、大丈夫!」
その瞬間、電話口からドアをノックする音が微かに聞こえた。
『今から会いに行くよ。どこにいんの?』
「いい!本当に大丈夫だから!試合でミスっちゃって。また、電話する」
『……わかった。いつでも呼んでくれて構わないからな』
「ありがとう、おやすみ」
私は電話を耳から離して通話を終える。
そしてそれをベットにほっぽって自分もゴロンとする。
「あーあ……」
一也は一人じゃ無かった。
きっとあの彼女だ。
わかってる。
彼女にヤキモチを妬いているのは。
自分が結論を出せば彼女と別れてくれるのも。
昨日までならきっと鉄朗に電話をして飲みに付き合って貰ってた。
けれど彼の気持ちを知った今、一也の事で相談も愚痴も言えない。
モヤモヤした気持ちを抱えながら安眠なんて出来るはずもなく、眠ったり起きたりを翌日まで繰り返していた。
翌日の練習は散々で、得意のクロス打ちさえコートに決まらない。
コーチだけじゃなく、監督にも怒られた。
「ストレス発散に行こう!」
と主将の一声でカラオケに行く事になり、私も準備していた。
荷物を持って外へ出ると、出入り口に女性が立っていた。
「さん、少しお時間貰えませんか?」
声を掛けて来たのはあの日、一也といた女性だった。
「ちょっ!ってば藤堂霞とどこで知り合ったの!?」
「間近で見ても綺麗!!」
チームメイトが騒ぐけど、私は誰だか分からなかった。
するとメンバーの一人が「美人アナウンサーで有名な藤堂霞さんです」と教えてくれた。
「車の中でお話しましょう」
にっこり微笑まれて促された小型高級車の助手席。
確かにテレビに出てる人と店で話す内容じゃないだろう。
私は素直に従って車に乗り込んだ。
2018/05/22
アトガキ
頭の中が整理出来て話がやっと進みました。
まだ私の中で完結してないですが、
そろそろ終わりに向かってる事は確かです。