第七話
手を引かれて着いたのはマンションで。
「上がってく?」と聞かれてけど断った。
そしてマンションの地下にある駐車場に行って車に乗り、寮まで送ってくれた。
話している内容は普通の事だけど、もうすぐ着く時に思いだした事を口にしてみた。
「送ってくれてありがとう。さっきの人、本当に大丈夫なの?」
「が戻ってくれば会う事もなくなるよ」
「どういう意味?」
一也は意味ありげに微笑んで車を降りて助手席のドアを開けてくれる。
「それより今度はゆっくり遊びに来てよ」
「え?」
「?」
一也に手を引かれた車から降りた瞬間に名前を呼ばれる。
振り向けば鉄朗がチームメイトと帰宅したところらしい。
いち早く一也が口を開いた。
「こんばんは」
「ああ、どうも。あれ?今日って撮影じゃなかったっけ?」
「さんと飲んでたけどバッタリ会って送って貰った」
「の予定まで知ってるんですね」
「チームメイトだし、仲が良いんで」
「チームメイト、ね。それじゃあ、。また連絡するよ」
一也は鉄朗に一礼し、車に乗り込んで行ってしまった。
私も向きを変えて寮に帰ろうと向きを変える。
「それじゃあ」
「ちょっと待って」
私の腕を掴んだ鉄朗は、そのまま後ろを向いて一緒にいた人に「先行ってて」と言った。
そして私の方へ向き直る。
「本当はこのタイミングで言うつもりなかったけどさ、のんびりしてられる状況じゃなさそうだし」
「何?」
「好きなんだけど」
「・・・・・・は?」
「まあ、そういう反応だよな」
「え?」
「はさ、俺の事最初から異性として見てないってコト」
「そんなこと!」
「どうせ兄貴とか親戚の人くらいにしか思ってないんじゃね?」
「・・・・・・」
「俺はとキスもしたけりゃ、セックスだってしたいって好きだから」
そして腕をグイっと引かれて体がくっついて耳元に吐息を感じた。
「っ!!!?」
「今すぐ答えろとか言わないけど、早く答えは出せよ」
耳元で低い声が鼓膜を震わせる。
鉄朗は体を離して「ちゃんと寝ろよー」と手をヒラヒラさせて行ってしまった。
「はぁ~~~」
私はその場にしゃがみこんだ。
一也は多分さっきみた彼女と付き合っている。
だけど私が寄りを戻す(だから別れてないんだけど)なら彼女との縁を切ると言う。
はっきり言わないのは私にプレッシャーを掛けないようにだと分かる。
「黒尾は何にも言わないの?」と言うさんの台詞は、この事だ。
一也とはっきり分かれて無い以上、次の彼氏を探す気にならなかった。
だから無意識に鉄朗を遠ざけてたのかもしれない。
「あーーーもう!」
私は勢いよく立ち上がって寮を目指す。
眠れる気はしないけど体は疲れているんだ。
それならばベッドに潜り込んで寝てしまおうと、急いで部屋に向かった。
2018/04/09