第六話
あれから一也と2回食事に行った。
オフシーズンだからと体育館まで迎えに来てくれるし。
あの頃の一也とは違うけど、好きだと思った一也がいるのも事実だ。
「で?御幸一也とどうなってんの?」
「ぶっ・・・さん、直球ですね」
今日は別チームの仲良し先輩、さんと会っている。
この間の撮影に不備があったらしく、私達二人にだけ写真の撮り直しが来た。
なのでシーズン中だけど休みに合せてスタジオに行き、帰りに食事でもとレストランに入った。
「回りくどく聞いても聞きたい事は変わらないなら手間かけてもね」
「さんと結婚したかったな」
「良く言われる。で?」
この調子だと逃げきれないのは分かってる。
相手はさんだし、素直に話し始めた。
昔付き合ってた事、女性といるところを見てしまった事。
それから連絡がなく自然消滅だった事。
あの収録の日から食事に行く様になった事。
そして寄りを戻そうかと思ってる事を話した。
「・・・・・・・」
「さん?」
「黒尾は?」
「鉄朗?」
「何か言われてないの?」
「何かあれば言えよって」
「・・・・・・そうきたか。でも、まあ・・・いいんじゃない?」
「そう思います?」
「だってはまだ好きなんでしょ?」
「どう・・・なんですかねぇ・・・気持ちは残ってると思うけど」
「いいんじゃない?青春みたいで」
「そんな年齢じゃないですけど」
なんて会話をしながらお酒を嗜んだ。
「さーて、明日もお仕事頑張ろうかねぇ」
「また明日から敵同士ですね」
「ふっふっふ・・・負けない・・・あれ?」
「どうし・・・っ!!?」
さんの視線の先にいたのは、一也だった。
その隣には彼の腕に絡みつく女性。
「やっぱあれって・・・」
「・・・・・・・・・」
今も昔も同じなのか。
寄りを戻そうとした瞬間の不意打ちは結構なダメージになる。
すると私達に気付いた一也が女性に何かを言って小走りに駆け寄ってきた。
そしてさんに頭を下げ、私を見た。
「珍しいじゃん、こんなところで」
「あ、うん。撮影の撮りなおしで」
「言ってくれれば送り迎えしたのに」
「彼女は良いの?」
私の聞きたい事をさんが口にする。
「ん?ああ、優先なんで」
「なるほど。でも付き合ってるんでしょ?」
「そうですね。でも次第ですけど」
「え?」
「なるほどなるほど。御幸さん、この子の事送ってくれません?」
「ちょっ!さん!?」
「勿論です。それじゃあ、行こうか」
「んじゃ、、また試合で」
「えー!?ちょっ、さん!!!?」
さんは私に背を向けて手をヒラヒラしながら歩き出した。
一也も一也で横でニヤニヤしてるし。
と言うか彼女は!?
先ほどの位置に視線をやると、既にそこには誰もいなかった。
「俺の家そこだし、車取りに行って送るよ」
そう言って私の手を掴み、歩き出した。
2018/03/07