第一話
子供の頃に見たバレーボールの試合で、選手に羽が見えた。
その背中に憧れて中学から始めたバレーボールに魅入られる。
三年間頑張り続けて楽しさと辛さを知り、更に上を望んで選んだ青道高校に入学。
二年の半ばからコーチに「お前の身長で上を目指したいならリベロに転向しろ」と言われた。
自分のスパイクで高いブロックを打ち抜けないのは分かっていた。
ドシャットされてフォローに来た子が拾えない時の悔しさったらない。
ブロックアウトを狙ってるだけじゃ上にはいけない。
「スパイカーだったお前だから分かるスパイカーが嫌がるリベロになれ」
監督にそう言われたからリベロになろうと思った。
「なら出来るって」
そう言って抱きしめてくれた恋人の温もり。
それらがあったから今がある・・・・・・
会議室と書かれたプレートの部屋のドアをノックして「失礼します」と開けて中へ。
応接セットに腰掛けているのは広報の小泉さんと男子バレー部の黒尾鉄朗だった。
「あ、来た来た」
「遅いぞ」
「外周走ってたんですよ」
鉄朗の隣に座り、小泉さんと向き合う形になる。
テーブルにはラフ画と書類があった。
「んじゃ、揃った所で。スポーツドリンクのCMが来てる」
「って事はスポンサー様かな?」
「全日本のな。で、その全日本から数人バレーの代表として出演して貰う。スポーツ全体と、バレーだけの2本だ」
「他には誰が?」
「サン○リー男子から木兎、後、東○の影山、日本○ばこ女子からだな」
「まためんどくさそうな」
「で、これが日程。次の打ち合わせあるから、そういう事だからよろしくな」
それだけ言い残して小泉さんは慌ただしく小泉さんが部屋を出て行った。
テーブルに置かれた名前の書かれた封筒を手にして中身を出してみる。
そこにはCMに関する様々な事が書かれていた。
一通り目を通して書類を封筒に戻して立ち上がる。
「さて、練習行かなきゃ」
「なあ、今日と飯行くけども行くか?」
「あ、良いね。んじゃも誘ってみるよ」
「が泣いて喜ぶな」
「あはは。今日はの奢りかな?」
「誘えればな。んじゃ、後で」
「OK」
男子と女子は体育館が違うので、分岐で別れて体育館に戻った。
は男子の選手でが好き、は私の後輩での気持ちを知ってる様な感じで良い雰囲気なのだ。
無理にくっつけようと思っていなけど、私達四人は仲が良い方で、こうして時々夕飯を食べに出掛ける。
いわばこれは日常茶飯事だ。
「美味しいお酒の為に頑張るか」
ロッカーに書類を入れ、体育館に向かった。
撮影当日。
大き目な控室で撮影を待っていた。
みんな全日本の練習だ何だで会っているので新鮮味はないけど話は盛り上がる。
まあ、専ら木兎が、なんだけど。
スタッフが呼びに来てスタジオへ移動する。
そこではまだ前の野球が撮影しているみたいだ。
「―――え?」
キャッチャーマスクを被ってボールを投げようとしている人物に目が行った。
そのフォームに見覚えがあったから。
「はい、カットー!」
監督の声に彼がマスクを取った。
そして自分の予想は当たっていたのだ。
「へいへいへーい!今度はバレーボールチームの番だぜ」
「サイン貰えますかね?」
「影山、誰かのファンなの?」
「いや、他の種目と関わる事ってあんまないんで」
「まあ、確かに。ん??」
「・・・・・・」
鉄朗が私の名前を呼んだのは分かってる。
けれど私の視線は御幸君に向かっていて、彼が近付いて来た。
「・・・・・・久しぶり」
懐かしい声が私の名前を呼ぶ。
この声に名前を呼ばれる度に胸が高鳴ったものだ。
数年振りに見る彼は、あの頃よりも大人びていた。
2018/02/13
アトガキ
ついに初めてしまいました。
初VSです。
どちらかを悪者にするVSは避けてきたんですけどねぇ。
まだ書き終えていないので、どうなるか謎です。
お付き合いいただければ幸いです。