御幸編 第一話


と離れてから、本当にろくでもない付き合いばかりしてきた。
そして気付かされた。
彼女との時間は『幸せ』だった事に。
名前ではなく苗字で呼ばれた事に距離を感じた。
その距離を作ったのは間違いなく自分で落ち込むのは筋違いだってわかってる。
は自然消滅を受け入れていて、恋人はいるんだろうか?
この間の撮影の時にも、今日も一緒にいたあの男は誰だ?
もしかして恋人なのだろうか?


むしゃくしゃした気分を抱え、今付き合いのある藤堂霞と会っていた。
夕飯を食べ、ホテルに向かって歩いている途中でを見つけた。
「悪ぃ。ちょっと用事が出来た」
それだけ伝えてを見失わないように追いかける。
追いついて話しかければは一人じゃ無かった。
けれど一緒にいた女性からを送ってくれと言われたのでOKした。
そしての手を取り、車のあるマンションに向かう。
「上がってく?」と聞けば首を横に振られて断られる。
もしかしたら藤堂さんの事を気にしてるんだろうな。
けれど彼女を家に上げた事は無い。
車にだって乗せてない。
それを今言っても言い訳にしか聞こえないだろうから言わないでいた。
けれどが自分と元の関係に戻るなら彼女と別れるとは言った。
以上の存在は自分の中でありえねえし、事実を言ったまでだ。
だから彼女を送り届けた時に「それより今度はゆっくり遊びに来てよ」とだけ言う。
背後からを呼ぶ声が聞こえて振り返ると、そこにまたあの男がいた。
「こんばんは」
「ああ、どうも。あれ?今日って撮影じゃなかったっけ?」
挨拶をすれば挨拶が返ってくる。
なんか嘘くさいけど。
勘で分かる。
に惚れてるんだって。
の予定まで知ってるんですね」
「チームメイトだし、仲が良いんで」
ああ、やっぱり。
彼はに惚れてて、俺との仲を分かってる。
牽制には牽制で返すしかない。
「チームメイト、ね。それじゃあ、。また連絡するよ」
真っ黒い嫉妬の感情に取り込まれないうちに、余裕があるうちに退散しようと車に乗り込んだ。




2018/08/15

アトガキ

時間が空いてしまいましたが、
御幸の二話目です。

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