呪術廻戦
ホントに、スキ。
「……っ、いててて」
目が覚めて体を起こすと激しい頭痛にみまわれこめかみを指で押す。
痛みで閉じた目をそっと開くと、そこは見慣れない部屋だった。
「え?ここどこ?」
しかも視界に映った自分の腕は真っ白いYシャツだった。
パニックした頭でグルグルしていると部屋のドアが開いて呆れた声で「やっと目が覚めたんですか」と低くセクシーな声がした。
「え?」
マグカップを持ってドアに寄りかかる姿はグラビアのモデルか!ってくらい様になってた。
え?七海さん?
「え?」
「えではありません。まだ私のベッドを占領する気ですか?」
「ちがっあっ…あつっ!!!!」
「あぶない!!」
急いで起きてベッドから降りようとしたのは良いけど、掛布団に足を取られて落ちそうになったら七海さんが受け止めてくれたけどマグカップの飲み物を浴びてしまった。
「まったく何をしてるんですか!」
その瞬間に体がフワリと浮き上がり、七海さんに抱きかかえられてると理解した瞬間「冷たっ!」頭から水を被る事に。
「どこにコーヒーがかかりましたか?」
「え?あ、肩に」
「ちゃんと冷やしてください」
「はい……えぁ!?」
コーヒーが掛かった肩を見ようとして気付き、両手で体の前でクロスさせる。
着ていたYシャツ(七海さんの)が水で透けて自慢出来ない体の線が浮き出ていたから。
「まったくあなたには困ったものです。タオルと着替えを用意しておきますからちゃんと冷やしてきてください」
七海さんは背を向けて風呂場を後にしたけど、一緒に水を浴びたその体はやはりTシャツが透けて鍛えられた体が浮き彫りになっていた。
それはまたセクシーで片思いしている自分としては、なんとも言えない光景だった。
肩を冷やしたついでにシャワーを借りて風呂場を出る。
脱衣所にはタオルとスウェットの上下が置かれていた。
とはいえ……厚手だからブラは良いとしてショーツが無い。
仕方なくそのままズボンを履こうと思ったけど、大きくて紐で縛っても落ちそうになる。
天下の七海建人に「コンビニでショーツ買ってきて」なんて言えるはずも無く、仕方なくシャツを抑えながら脱衣所を出た。
脱衣所を出るとそこは廊下で、右と正面にドアがある。
なんせ記憶にないまま部屋にいたから何も分からない。
とりあえず正面のドアを開けるとダイニングで七海さんがキッチンカウンターの向こうにいた。
マグカップを両手に持ち片方を私に差し出しながら「どうぞ」とテーブルに置いたので「ありがとうございます」と言いながらそこに座った。
マグカップを取り、手を添えて口に含むと温かくて甘いカフェオレでほっとする時間がもてた。
無言の時間が惜しくて話しかけようにも話題が無い。
無いというのは語弊があるが、夕べの醜態を掘り返す気にならないでいると「私は無駄を好みません」と七海さんが口を開いた。
任務中とは違って眼鏡を通さない目が私をとらえている。
「さんは私が好きなんですか?」
「………はいぃ?」
想いもよらない切り口に思わず素っ頓狂な声が出てしまうのは仕方ないと思う。
ついでに馬鹿みたいに口を開いてると自覚したのは話が終わってからだった。
「あなた自身がベロベロに酔っぱらった状態で口にした言葉です」
「マジですか?」
「嘘を言って何の得がありますか?」
「いえ、無いですけど」
「それで答えは?まだお聞きしていませんが」
「えっと……」
「無駄な時間は省いてください」
「はい、好きです」
「それなら問題ありませんね」
そういって七海さんは立ち上がって私を抱き上げて歩き出し、ものの数秒でベッドへ降ろされる。
「ちょっ!?」
「まったく、昨日から私の理性を試されてるのかというくらい煽られましたからね。覚悟してください」
「ちょっと待って!煽ってなんか!」
「ならばコレは?」
と大きな手が太腿を下から撫で上げるから「あっ」と思わず甘い声が出てしまう。
そしてその手は下着と言う障害も無くシャツの中に入りこんで腰骨を撫でた。
「嫌なんですか?」
「嫌とかじゃなくて」
展開の速さについていけないんですと言葉にならないうちに首筋にキスが。
「それならば問題無いですね」
「でも!?」
「ああ、大丈夫。私もが好きですから。そろそろ黙って貰えますか?」
視界に髪じゃなくて元々細い目が更に細くなった双眸が私をとらえたと思ったら唇が重なった。
ああぁもう!
私の方が好きなんだから!
そう伝われば良いなと思い、彼の背に腕を回した。
2022.02.04