呪術廻戦
呼吸を許して
ちょっと厄介な任務をこなして家に帰ると日付が変わる1時間前で、ゆっくりと疲れを取ろうと湯船に浸かって上がる頃には翌日になっていた。
パジャマ代わりのスウェットを着て冷蔵庫から水を取り口にすると、この時間に似つかわしくないインターフォンが来客を告げる。
モニターに映し出されたのはグラサン姿の男。
このまま放置すると近所迷惑になる事をされたので問答無用でオートロックを解除する。
画面から男が消えたのを確認して玄関のカギを開けて再び部屋に戻って水を口にした。
「ふぅ……」
一息つくと勝手知ったる男は玄関を上がって来て「終電なくなっちゃった」と茶目っ気たっぷりに言った。
「そうですか」
簡潔に答えるとまた勝手知ったるで「シャワー借りるよ」と風呂場へ向かった。
とにかく彼の相手が出来るほどの余裕がないくらい疲れている。
だから私は寝室に行ってベッドに潜り込むとすぐ眠りについた。
違和感を感じて眠りから覚める。
背中には風呂上りであろう彼の普段より高い体温があり、手が私のスウェットの中に潜り込んでいた。
「疲れてるんだけど」
「知ってる。伊地知に聞いた。だから癒そうと思って」
「そう思うなら寝かせて」
「ダ~メ」
潜り込んだ手が私の快感を押し上げていき、綺麗なアイスブルーの目が私をとらえて離さない。
そして気を失うほど抱かれた。
目が覚めると太陽が既にてっぺんに近い所にあった。
隣にいたはずの彼はすでにいない。
気付けば彼が置いていったTシャツを着ていて、きっと私が寝てから着せてくれたんだろ。
ベッドから降りてリビングに行くと「おはよ~」とソファでくつろぐ悟がいた。
「まだいたんだ」
「そんなに邪険にしなくても良くね?」
「いつもの事でしょ」
「彼氏に対して酷くなーい?」
「は?いつ彼氏になったのよ」
「はぁ!?は彼氏でも無い男と寝るの!?」
「だからいつ彼氏に」
私達の関係ってただの先輩後輩で、しかも体の関係があるってだけの話だ。
好きだの愛してるだの言った事もなければ聞いた事も無い。
「は僕が他に女がいるとか思ってんの?」
「考えた事もないけど」
なんて言うのは嘘だけど。
御三家と呼ばれる家の出身で最強と呼ばれる男だ。
私が独り占めできるような存在じゃない。
それこそ今の関係でさえ欲深いというものだ。
彼との話を終わらせようとキッチンへ行こうとすると、腕を引かれてバランスを崩す。
「惚れた女が自分のシャツ着てるのをみて欲情しないわけがない」
彼の上に倒れこむと同時にむき出しの太腿を大きな手が撫で上げる。
「んっ…」
夕べの名残もあって小さな快感が体を突き抜けていく。
「言っておくけど。僕が時間を割いてまで家に来るのはだけだから。ちゃんとの事を好きだとも思ってる」
「……」
「だからさ、も俺だけにして欲しいんだけど」
「………ほかに男なんていないけど」
「だよね~やっぱ僕より良い男なんていないもんね~」
「それは分からないけど」
「んじゃ、わからせないとな」
「きゃあっ!」
そういって悟は私と体勢を入れ替えてソファに押し倒し、嫌と言うほど分からされることになった。
2022.01.27