ハイキュー!!

及川徹

その呼吸まで僕に頂戴。

青葉城西高校を卒業し、大学に進学。

新しい環境で生活。

新しいスパイカーとの調整も楽しいものだ。

マネージャーと呼ばれる存在も複数人いて、練習環境もかなり良い。

その中にさん(3年)と言うクールビューティーがいる。

烏野高校出身らしいが、あの学校のマネはそういうの限定なのか?

いや、小さい騒がしいのもいたか。

とにかくさんは仕事も出来る。

気が利く、見目が良い、故に高嶺の花らしい。

俺も業務連絡以外で話した事は無い。

「おい、及川。自主練付き合え。、球出し頼む」

ウチのエースである陸さんからの声掛け。

しかも球出しがさん。

「レシーブが乱れた時事を考えて、は好きな所に投げろ。

 及川はかならずレフトに上げろ。いいな?」

「いきます」

そしてボールが弧を描く。センターだ。

俺は弧の落下地点に入り、トスを上げる。

「トスはもう少し離してくれ」

「わかりました」

さんは先ほどとは違う位置にいて、ボールが放たれた。

今度は小さい弧で、オーバーで上げる事が出来ない。

アンダーで構え、2段トスの様な形でレフトへ。

「もっと高くて良い」

「はい」

視線を移せばまたさんが違う場所にいた。

しかも毎回球の強さも高さも違う。

これはかなり大変な練習だ。

「よし、今日は上がるぞ」

「「お疲れ様でした」」

一時間だけだったけど、かなり勉強になった。

「クールダウンして着替えてきて良いよ。片付けは私がやるから」

「じゃあ、クールダウンの間だけお願いします」

そしてストレッチを始める。

その間もさんはテキパキと仕事をこなしていく。

彼女がモップを持った時、俺も倉庫から持ち出してコートを往復する。

俺達の中に共通の話題もないからか、黙々と掛けてゆく。

そして体育館を後にし、部室へ向かった。

マネージャーは他の部の女子と同じ部屋を使っていて、一旦別れる。

しばらくして帰り支度を整えたさんが部室に来た。

「及川くん、終わった?」

「あ、はい、終わりましたー」

控えめなノックの後、ドアから姿が見えた。

ロングのワンピースに薄手のカーディガンを羽織る彼女。

「チェックしてから鍵閉めるから先に帰って良いよ」

「いえ、終わるの待ってます。駅まで送りますよ」

「・・・・・・わかった」

そして部屋のゴミを集め、電気やシャワーの確認をして部室を出る。

校門を出た所でさんが口を開いた。

「彼女、待ってるみたいだけど?」

彼女の指した指を辿る。

指の先には見た事も無い女の子が俺を見ていた。

「知らない子ですよ」

「ふーん?」

そして駅を目指す。

「あ、あのっ!」

女の子が駆け寄って来た。

正直、面白くない。

ん?何で面白くないんだ??

「お、及川さん、少しお時間貰えないでしょうか」

「ごっめーん!今から本命のカノジョとデートなんだ」

「え?」「ちょっと!」

「だから、ごめんね?」

そしてさんの肩を抱いて足を進める。

夜道を歩いていて、公園があった。

俺は彼女の手を引いて、そこに足を踏み入れる。

「駅、こっちじゃないんですけど」

「さっきの聞いてました?」

「何を?」

「彼女ってヤツですよ」

「ああ、口実でしょ」

「さっきまでは。それを本当の事にしたいんですけど」

「ああ、それは無理」

「なんで!?彼氏がいるとか!!?」

「いや、いないけど」

「案外淋しい人なんですね」

「うっさい」

「だから俺が彼氏に立候補します」

「だから無理」

「なんで!?」

「私はさ、すっごいヤキモチ妬きなの。だから及川はパス」

「なるほど」

「さ、帰る・・・っ!」

背中を向けそうになった彼女を抱きしめた。

暴れはしないものの、俺を抱きしめてもくれない。

「好きです。他の人と話してるのを見るだけでムカツクくらい」

「他の女の子に良い顔しないで」

「インカレで優勝して」

「えぇ!?それって俺だけで勝てるものでも無いよね!?」

少し体を離して彼女を見ると、まっすぐ俺を見ていた。

あぁ・・・俺だけがその瞳に映ってる。

彼女の全てが欲しい。

今すぐ欲しい欲しい欲しい!!!!

「手付ください」

「・・・・・・いいよ」

彼女が背伸びをして俺の肩の上を腕が通り過ぎた。

俺は状態を倒し、ぎゅっと抱きしめる。

密着する体が熱を上げていく。

キスの合間に艶めかしい吐息が漏れる。

絶対さんの全てを手に入れる。

今は吐き出される吐息すら、俺のものにしたいんだ。


2016/07/22