ハイキュー!!

木兎光太郎

来年も一緒に騒ごうよ

大人と子供の境目。

法律で言えば22歳だから成人だが、大学生だから微妙な所。

大学のメンバーと最後のクリスマスと騒いでいた。

けれど実家(都心から電車で45分)の私は終電が無くなる前に帰路に着いていた。

乗り換えの駅で時刻表を確認していると、すれ違った人に腕を掴まれた。

「やっぱだー!」

「え?」

視界に入って来たグレーのツンツン頭。

幼さの消えた男のドアップ。

「え?木兎??」

「久しぶりだなー元気そうじゃん」

「木兎も」

「なあなあ、今ヒマ?少し話そうぜー」

「ああ、うん、いいよ」

本当は良くない。

次の電車を逃したら家に帰れなくなる。

でもそれでも木兎と居たかったのは、高校時代片想いをしていたからだ。

本当は卒業の時に告白しようと思っていたけど、

彼は実業団チームに行くと聞き、社会人と大学生と言う環境の違いに慄いたのだ。

その彼からの誘いだ、断れる訳が無い。

とりあえず親には友達の所に泊まる旨を連絡しておいた。

そして木兎と一緒に改札を出る。

近くのお店は予約でいっぱいで入れず、コンビニであれこれ仕入て公園に向かった。

缶チューハイで乾杯をし、かわきものを摘まみながら話をする。

話す内容は高校時代の事が多かった。

「そういえば成人式って試合で出れなかったんだよな~」

一足早く社会人になった彼。

学生とは時間の使い方が違うのか、バレーボールと言う職業柄なのか。

成人式には確かにいなかった。

「というか、住民票の加減で会場違ったんじゃない?」

「あーーーそうだ!」

手で顔を覆い、空を見上げる仕草。

何年経っても木兎が変わってない事に安堵する。

お互いに既に酔いも回っているせいか、公園の遊具ではしゃぐ 。

ブランコ勝負をしたら、先に酔いが回った木兎がしゃがみ込んで後ろからブランコが直撃。

滑り台では私のヒールでストップが掛からず滑り落ちてスカートが汚れたりと、

夜の静かな公園に二人の笑い声が響いた(ご近所さんごめんなさい)

「あれ?今、何時だ??」

「ん~?あ、2:13だね」

「げっ!終電ねーし!!!こっから走ったらどのくらいかかるかな・・・」

「頑張れ、バレーボールマン」

「ていうかは?」

「満喫かな」

「げっ!アブネーだろ」

「歩いて帰る勇気も体力も無いからね~」
「んじゃ、始発まで一緒にいるか」

そう言って木兎は私の手を取って歩き出した。

スマホで探した結果、近くにファミレスがあるから。

「にしても楽しかったな~」

「そうだね~。木兎が声を掛けてくれたからだね、ありがとう」

「俺も楽しかったしな。来年も楽しもうぜ!」

「来年ね~」

「どした?」

「いや、木兎には彼女いるかもよ~?」

「それ言ったらもだろ?・・・・・・あ!!良い事思いついた!!!」

「ど、どうしたの?」

が彼女になればいい!」

「は?」

「俺、高校時代お前の事好きだったんだよな~」

「え?」

「でも俺就職だったし、言えなかったんだよ」

「・・・・・・」

衝撃の告白に思わず足が止まった。

木兎は繋いだ手が止まって引っ張られたから後ろを振り向いた。

私は空いた手で顔を覆う。

?」

「えっと・・・私も好き・・・だった」

「え?マジ?」

「うん」

すると木兎は私を抱き上げ「やったー!」とクルクルしだした。

けれど酔いが回ってすぐに止まった。

そして再び手を繋いで歩き出す。

「やべ・・・酔いが回った」

「ブランコにグルグルもしたからねー」

「このまま帰したくねーなー。でも俺、寮だからジョキンキンセイなんだよ」

「それ殺菌しちゃってるね。女人禁制でしょ」

「それそれ。あ、ホテル行かね?手は出さねーし」

木兎の様子からしても、何も出来ないであろう。

近くのラブホに入り、ベッドにゴロンとする。

抱き寄せられて体が密着する。

「来年も一緒にいような」

「うん」

「でもその前にも色々イベントあるし!仕事もあるけど、大事にする・・・から」

段々と声が小さくなっていき、寝息に変わった。

もう大人なのに変わらない木兎。

何だか寝顔を見ていたら、私も起きていられなくなった。

大きな体に抱き着いて、眠りについた。


2016/12/14