ハイキュー!!

及川徹

首筋に残る夜の香り

冷たい風が肩を撫で目を覚ます。

重たい瞼を無理矢理持ち上げて現状を確認する。

真夏の生暖かい空気では無く、エアコンを切り忘れた様だ。

隣で眠る彼女も体を丸めて寝ているところをみると、寒いのがわかる。

無機質な「ピッ」と言う音を上げエアコンが止まる。

ベッドから抜け出し窓を開けると夏にしては冷たい風が入ってくる。

起きたついでにキッチンに足を延ばして水分を摂る。

洗い物が残っているのは片付ける前に彼女をベッドに連れ込んだから。

洗い物を増やしてベッドに戻る。

いつも俺に背を向けて眠る彼女が数分前まで俺がいた方を見ている。

ベッドに腰掛け、彼女を見る。

「ほんと、可愛いな~」

彼女はどちらかと言えばツンデレだ。

傍から見れば『イイ女』の部類だが、一緒にいると別人。

牛乳パックを良く逆から開けてX型になってたり、

ボディーソープとシャンプーをまちがえたり、

シーツを裏表間違えて面倒だからとそのままにしたり、

ホットコーヒーにガムシロを入れたり、

『なんで主人公って天然ばっかなの!』って怒るけど自分が天然だったり。

けれどそんな姿は俺にしか見れない限定のスーパーレア!

今までは相手から思いを寄せられる事が多かったが、

に関しては絶対俺の方が好きの度合いが大きい。

「私だって徹の事ちゃんと好きだし!というか私の方が絶対好きだよ!」

って言ってくれるけど、やっぱり俺の方が絶対好きだ。

彼女の薬指に嵌められた指輪を撫でる。

これは俺が初任給で買ったシンプルな指輪だ。

そして俺の首にも彼女から貰ったプラチナのネックレスがある。

ネックレスは俺が強請ったものだった。

「指輪は試合中に出来ないからネックレス欲しい!」

「えー?なんか束縛してるみたいでイヤだ」

に束縛されたいから良いの」

そして選んできてくれたのが今しているヤツだ。

彼女の手を握り、隣に体を滑らせる。

顔に掛かっている髪を梳いて後ろへ流す。

首元にはうっ血した後が複数見える。

キスマークっていかにも「ヤリました」って感じの刻印で好きじゃなかったのにな。

には「俺のモンだ!」って欲が大きい。

寝顔を眺めていたらが寝返りを打っていつもの体勢に。

「何でそっち向くのかな~」

枕の上に頬杖をつき、反対の手で彼女を引き寄せる。

彼女から見えないうなじにキスマークをつけてやろうと思って顔を寄せる。

色濃く残る行為の名残が俺の何かを刺激する。

唇を寄せ強く吸いあげると赤く印が残る。

そこに舌を這わせれば彼女が「ん・・・徹?」と甘い声で俺の名前を呼びながら振り返る。

「あ、起きた?」

「なにしてんの?」

「いや~眠ってるが可愛くて」

「おやすみなさい」

「待って待って!寝ないで」

「嫌な予感しかしないんだもん」

「いいじゃんいいじゃん、明日は仕事休みなんだし」

「休みだけど徹の部屋の片付けしないと」

「ん~それは俺も頑張るからさ。ね?もう1回シよ?」

「明日は徹が馬車馬のごとく働くなら」

「おおせのままに」

唇を重ね合わせ、柔らかな体に掌を這わせた。



2016/08/09