ハイキュー!!

及川徹

幸福への招待

廊下で女の子たちと話をしていて、顔を上げた瞬間こちらを見た子がいた。

教室に座っていて、ふと出入り口に目を向けたら彼女が通って視線が合った。

朝礼で講堂にいて視線を移した瞬間、また彼女がふと視線を移してきた。

三度目の時、「あ」と言う顔になって会釈された。

朝礼が終わって教室に戻る時、一緒になった岩ちゃんに聞いてみた。

「ねえ岩ちゃん、彼女の事知ってる?」

「どれだよ・・・・・・ああ、だろ」

?」

。1年の時同じクラスだった」

「ふーん」

「告られたのか?」

「違う違う」

「だよな」

「何、それ」

「あいつがお前を好きなイメージねえし」

「ふーん・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・お前が気になってんのか」

「ん~わかんない」

岩ちゃんとの会話はそこで終わった。

それからと言うもの、彼女との視線は何度となく会う。

お互いになんとなく視線を移したらってカンジなんだよね~。

俺の周りにいる女の子と違って「及川さん好き好きー!」って感じの視線じゃない。

まあ、万人が俺を好きなワケじゃないし(そこまで己惚れてないよ)。

そのまま気にしないでいようと思ったけど、何となく彼女を視線で追っていた。

いつもニコニコとしていて、必ず誰かと一緒にいる。

それは色んな女の子だったり男子生徒だったり。

案外運動神経も良いっぽいな。

校庭で体育の授業をしている彼女が視線を上げた。

見ていた俺は小さく手を振ってみる。

彼女は頭に?マークを浮かべた様な顔をしつつも、小さく手を振った。

「ぷくくく・・・」

「おお、及川。問題が簡単すぎて笑えたか?前出て問いてみせてくれ」

「えぇーーー!?」

・・・・・・どんまい、俺。




放課後、部活の練習中にプリントを忘れた事に気付く。

教室は時間になると鍵が掛かるので、体育館から猛ダッシュする。

階段を2段飛ばしで上がっていき、角を曲がる。

「うわっ!」

「え、あ、ごめん!」

誰かにぶつかったので、とっさに腕を伸ばして体を支えた。

良かった・・・女の子だ。

抱きしめた相手が男だったらサイアクだし。

そして腕の中の人物を見る。

「あ・・・・・・ちゃん」

「え?お、及川君」

そして俺を見上げて目を丸くして、腕から離れて行った。

残念☆

「ごめんね、驚かせて」

「うん、びっくりした。危ないから走らない方が良いよ?」

いつもみたいに微笑んで忠告してくれる。

バイバイと言って去って行く彼女の腕を掴んだ。

「良く視線が合うよね」

「ああ、そうだね。ふふっ・・・授業はちゃんと前を向いた方が良いよ」

「見てたの!?」

「見えちゃったの」

くすくす笑う彼女が何だか可愛いと思った。

「ねえ、ちゃん」

「ん?というか、良く名前知ってたね」

「岩ちゃんに聞いた」

「なるほど」

「それでさ、好きになっちゃったんだけど」

彼女の瞳がぶつかった時より大きく開いた。

きっと彼女は「及川徹」を好きでは無い。

けれど俺は好きになっちゃったワケで・・・

これからどうやって口説こうかな?


2016/7/13