ハイキュー!!

及川徹

孤独なクリスマス

大学の入学式で及川徹を見かけた。

同じ高校出身でも、クラスが一緒になった事は無い。

故に向こうが私を知ってるはずも無いのでスルーする方向性で。

「あ、じゃーん。なに?スルー?」

「え?私の事知ってるの?」

「だって岩ちゃんと同じ委員会やってたじゃん?」

この出会いが切欠と言えば切欠だ。

そこから同じ学部だった事もあり会話が一気に増え、いつの間にか恋人になっていた。

社会人になった今も付き合いは続いている。

私は普通に地元企業のOLで、及川はバレーで東北を拠点とするチームに入った。

とはいえ電車で1時間はかかるし、簡単に会える距離では無い。

元々バレーで会えない事は多々あったし、自分としてもそれは嬉しかった。

未だに彼の『彼女』と言うポジションに慣れないのだ。

慣れないというか、慣れたくないと言うか・・・

つまり、私は別れを覚悟した上で付き合っているという事。

だからと言って彼が嫌いなワケじゃない。

あの飄々とした姿から感じさせない努力家な部分、

弱い部分を持ち合わせている彼が遠い存在では無いと実感してるから。

そんな彼を好きだと思う。

けれど最近、ここ数か月彼の口から『好き』ではなく『愛してる』と言う単語が出る。

最初はベッドの中だけだったのが、最近では何かの拍子に飛び出してくる。

けれど私は同じ言葉を返せないでいた。

ある夜、彼から電話が掛かって来た。

『クリスマスは試合で東京なんだ』

「ああ、うん、頑張ってきて」

は寂しくないの?』

「え?」

『応援来てよ』

「いや、無理。第4土曜は出社日だし」

それから電話越しにブーブーと言われた。

徹は感情を素直に出す性格らしい。

頑張ってと電話を切ると、その日の夜遅くにメールが1通届いた。

の愛情が薄くて徹クン泣いちゃう!』と。

そう思われても仕方が無いかなと思う態度を取ってる自覚はある。

けれど返信する事が出来ないまま、時間が過ぎて行った。



12月24日。

世間様は3連休なんて有難いものなのだろうが、うちの会社には無縁なもの。

いつも通りに仕事をして、普通に仕事を終える。

仕事仲間と帰りに食事でもと思ったが、カップルの仲を通るのもアレなので帰宅する。

夕飯の準備をして、テーブルに並べる。

そして片付けを済ませて色々してからお風呂に入る。

せっかくのクリスマスだからとバスキューブを入れてリラックス。

いつもより長めの風呂から上がり、バスタオルを巻いて部屋に戻る。

脱衣所は寒いので、さっさと部屋に戻るからだ。

けれど今日の私はドアを開けた所で固まった。

「やっほ~!メリークリスマス!!」

目の前にはサンタの衣装を着た徹に、テーブルにはミニツリーが飾られていたからだ。

ツリーの横にはクリスマスケーキも。

「なんで・・・」

「徹サンタだもん♪」

「今日試合だったでしょ?」
「そうそう。最終の新幹線に飛び乗っちゃった♪」

と言いながら、どこかのキャラクターの様に舌をペロっと出した。

そして私の方に歩いてくると、彼の腕の中に納まった。

サンタは俺に全てをくれるのかな~?谷間クッキリでグっときちゃうんですけど」

「え?・・・あ、ちょっと!」

少しかがんだと思えば私のお尻の下あたりから持ち上げられベッドに寝かされた。

「頑張った徹くんにサンタからプレゼント頂戴」

「徹・・・」

「それくらい良いよね?」

「仕方ないな・・・」

彼の首に腕を回してキスをする。

そして勢いをつけて体を回して体勢を入れ替える。

徹を見下ろしてキス。

「メリークリスマス。徹、ありがとう。大好き」

するとまた体が入れ替わった。

「あーもう!なんでそういう可愛い事するかな!メロメロにされたらヤバイんですけど!」

そう言いながらもタオルを剥いで体を這う手は優しい。

「俺なんか愛しちゃってるんだからね!今夜は覚悟してよね」

優しくふってきた徹のキスに、愛情をこめて返してやった。


2016/12/19