ハイキュー!!

赤葦京治

頭ぽん

「またフラれたんですか?」

おつまみにビールのジョッキが並ぶテーブルに突っ伏す私の頭をポンポンする男、赤葦京治という。

彼とは高校の同級生、木兎を通して知り合った。

それ以来の付き合いで、社会人になった今でも続いている。

むしろ木兎より連絡を取っていると思う。

木兎は気まぐれで連絡が来たり来なかったりだから。

というか、赤葦が木兎より1つとはいえ年下とは思えないほどの落ち着き。

そんな彼に私も甘えている。

こうして何かあれば彼を呼び出し、居酒屋で愚痴を聞いてもらっている。

呼び出せばいつでも来てくれるなんて、パブロフの犬・・・・・・では無いな。

そこまで従順じゃないし。

それでも、文句は言っても必ず相手をしてくれるのだから優しいのだろう。

「それより赤葦、いつも呼んだら来てくれるけど予定とか大丈夫なの?」

伏せてた顔を少しあげ、頬杖を突きながら私の頭をポンポンしてる彼を見た。

「何ですか、急に」

「いや・・・考えてみたら赤葦にも人付き合いがあるんだろうなと」

「やっと考えてくれましたか」

「いや、まあ、うん。と言うか彼女は?」

「この間別れましたよ」

「んな、あっさりと・・・」

「事実なので」

頭を撫でるのに飽きたのか、今度は肩までの私の髪を弄び始めた。

なんとなくその仕草に色気を感じてしまった。

そうだよね、彼女いたんだし、男としての魅力があって当たり前で・・・

掠めた思考を追い払い、赤葦の次の言葉を待った。

「どうしたんですか?」

「赤葦って彼女と続かないよね」

「そうですね。まあ、仕方ないと思いますよ」

「え?なんで?」

「本命がいますから」

「え?そうなの!?」

勢い良く上体を起こすと、赤葦の手から髪がするりとすり抜けた。

その瞬間に赤葦の眉が一瞬酔った気がするけど、それどころじゃない。

「何で本命と付き合わないの?」

「何でと言われても。相手にその気が無いので」

「えー?赤葦なら何とか出来るでしょ」

「どうですかね。今の関係が嫌いでは無かったのもありますけど」

「え?そうなの?」

「異様に食いつきますね」

「だって赤葦から本命なんて単語出てくると思わなかったもん」

「なるほど」

「それで?どんな人なの??」

「超が付くほどニブい人ですよ」

「天然か~」

「高校の時から思いを寄せてるのに気づかない人ですからね」

「それ、赤葦のアピールも足りないんじゃない?」

「やっぱりそうなんですかね」

「そうだよ!ガンガン行かないと!!!」

すると赤葦の手が伸びてきて、再び私の頭をポンポンと叩いた。

「ちょっと」

「まだ気付かないんですか?」

「・・・・・・え?」

「そろそろ俺の隣に落ち着きませんか?」

頭を叩いていた手が私の首に回って彼の顔が近付いてくる。

いや、私の顔が近付いてるのか?

(ここ、お店じゃん・・・)

そう思った瞬間に、彼の唇が重なった。


2017.04.17