ハイキュー!!

月島蛍

顎グイ

最初から分かってた。

蛍さんが優しくなる事なんかないって。

あのクールな感じが格好いい!とか思ってた自分を殴ってやりたい。

彼のファンにも「クールじゃなくて意地悪なんだよ!」って教えてあげたい!

はぁ・・・・・・なんだか虚しくなってきた。

憧れの仁花先輩に会いに行ったのが間違いだったのか?

そもそも彼に一目惚れした自分が悪いんじゃーーーー!!!!

いつもヘッドホンを首にしていて、孤高って感じが格好良かった。

けれど誰かがいれば絶対に外す優しさが垣間見えて惚れた。

結局惚れたが負けなのだ。

『仕事が立て込んでて、明日のデートダメになった』

「ああ、はい」

『会えなくて寂しいとか?』

「寝言は寝てから言ってください」

『寝言なら浮気しよーとか言ってもいいんだ』

ここしばらく会えなくて、更に追い打ちを掛けてくる蛍さんにイラっとした。

売り言葉に買い言葉。

「いいんじゃないですか?」

『ふーん。じゃあ、現実にするのもいいかもね』

「それじゃあ、お仕事頑張ってください」

と言って電話を切った。

切ってから後悔した。

しまくったさ!!!!!

「本当にって可愛げが足りないよね」って言われるけど、本当にそう思う。

ほんと、蛍さんも私の何が良くて付き合ってるのかな?

あ、別に気に入って無くても彼女って存在があれば良いとか?

話に聞く我儘とかを言わないから楽とか?

誕生日とかのイベントでもプレゼントより一緒の時間とか言ってるの私だし。

あれ?もしかして飽きられたのかな?

気に入って無いんだから飽きるはず無いか。

なら面倒になった??

・・・・・・・・ヤバっ。ディープに凹んだ。

負の連鎖に脳内を侵され、枕を濡らしながら眠りについた。



あれから一週間。

ついにメッセージもメールも電話も無かった。

はぁ・・・・・・もうなんか人生終わったかも。

バイトのシフトに欠員が出たと急に呼び出された。

今日の講義は超ハードな日だからバイト入れてないのにさ。

またディープに落ち込むくらいならってバイトに行ったけど後悔した。

落ち込む方が楽だったかもしれない。

「今日は悪かったね。片付けは良いから上がりなさい」

「それじゃあ、お先に失礼します」

店長の優しい言葉に甘えるとする。

ドアを開けると冷たい風が体を包み込んだ。

「まるで蛍さんの様だ」

「誰の事だって?」

「だから蛍さん・・・え?」

足元から視線を上げるとガードレールに座り、長い足をこれでもか!って投げ出している蛍さんがいた。

あーくそ、やっぱりイケメンだな。

って、イヤイヤイヤ・・・・・・え?なんで?

「そんなにアホ面しないでも俺だけど?」

「何でここに?」

「メールしても電話しても繋がらなくて家に電話したら絶対しないって言ってた曜日にバイトしてるって聞いたから来たんだけど」

そう言われてポケットから携帯を取り出す。

18時以降に連絡が5回にメールが8通。

「何か言う事ないの?」

「・・・・・・」

どうしよう・・・。凹んでた気分の凹んだ部分が平らになって真四角になっちゃった。

こんな些細な事でテンションが上がる自分がアホだなと思う。

何だか泣きそうだし、顔を見られたくないしで携帯を見続けていた。

「ちょっと聞いてる?ああ、もしかして、こういう事して欲しいとか?」

顎の下から頬をガッツリ掴まれ、上を向かされる。

まって!ひょっとこみたいな顔になってるから!!!!

「ほんとって笑わせてくれるよね」

って!意地の悪そうな顔全開!!!!

「うーーー」

「良いから、そのまま大人しくしてなよ」

蛍さんの指が顎に添えられてクイって持ち上げられると同時に近付く顔。

メガネが当たらない様に頭が傾けられて重なる唇。

「さてと。行くよ」

「え?どこに?」

「うち」

「でも」

「父親は出張、母親は孫の顔見に行ってて誰もいないんだよね。あ、叔母さんには外泊許可貰ってあるよ」

「え?」

「ドタキャンした分も含めて、たっぷり愛情を注がないとね。誰かさん、すぐ拗ねるから」

「拗ねてなんか!」

「ベッドの中では素直なのに」

「っ!!!?」

「続きはベッドでね」

優しく握りこまれて手を、そっと握り返して歩き出した。


2017.04.24