ハイキュー!!

及川徹

ハート形のチョコレート

バレンタインと言えば男の中では一年で最大のイベント!


モテモテの及川さんだって、やっぱり好きな子からは貰いたい!!

「貰ったチョコ、全部食うのか?」

「胃凭れしそう」

「ニキビ育成だな」

「ちょっと!?何でそう悪意のある言い方しかしないのかな?あ、僻んでる?」

「「「彼女から貰える」」」

「何でそんなに口をそろえて言うのかな!?」

「及川・・・お前、から貰えるのか?」

「はぁ!?な、何で・・・」

「好きなんだろ?」

「隠そうとしてもバレバレ」

「クソ川だしな」

「それって今関係ないよね!!!?」

と言うか、何でバレたんだろう・・・

とは三年の後半の委員会で同じになった。

それまで同じクラスにもなった事が無ければ、失礼な言いぐさだけど存在も知らなかった。

けれど委員会で話す機会が出来て、彼女を見ていると「いいな」って思えた。

何度か話しているうちに「大学が決まったら遊びに行かない?」って誘ったら「良いよ」って笑った。

その顔が良いなとか、笑ってる声が良いなとか・・・良いなが増えて好きだなって思えた。

今までは「好きです!」って言われて付き合ったりしたけど、今はさんと付き合いたい。

そんでもって「」って呼びたい。

きっと彼女なら微笑んで返事をしてくれるはずだ。




なんて思ってたら、あっという間にバレンタインになった。

けれど本命の彼女は来ない。

それ以外の子から「好きです」と告白もされたけど「好きな子がいるから」と断っていた。

放課後になっても彼女が来ないから、ホームルームを終えて彼女の教室までダッシュ!

さん!」

彼女は席で他の女の子達と話をしていた。

そこまで歩いて行くと「あれ?及川君?委員会で何かあったっけ?」と言った。

「違うけど」

「あ、コレあげるよ」

紙袋の中には同じ包装紙でラッピングされた袋があった。

その1つを取り出して俺にくれた。

「開けて良い?」

「良いけど、大したものじゃないよ?」

袋を開けるとチロルチョコが幾つか入っていた。

ああ、義理か・・・

「これは貰っておくよ。ありがとう。それで大学ってどうなった?」

「ああ、この間合格通知来たんだ」

「それじゃあ、デート出来るね。いつがいい?」

「で、デート!!?」

その瞬間、教室が色めき立ったのが分かった。

そして彼女の傍にいた友人達が「先に帰ってるね」と気を利かせてくれた。

「で、いつなら都合が良いのかな?」

「ちょ、ちょっと待って!こっち!!」

彼女が俺の腕を掴んで廊下に出る。

廊下に出た所で生徒はいっぱいで、空き教室まで来る羽目になった。

「で、デートって・・・。あれってそういう意味だったの?」

「どういう意味だと思ったの?」

「友達として出掛けるんだと」

「友達としてでも良いよ。でも二人だけでね。口説きにいくから」

「口説くって・・・」

「俺、ちゃんの事好きだよ」

「・・・っ!!!?」

「だからちゃんと付き合いたい」

「ま、待って!」

「考える時間あげたら断られそうだから今返事して」

「む、むりっ―――っ!?」

このままだと埒が明かないだろうから彼女を抱きしめる。

すると腕の中の彼女の体に力が入った。

「答えてくれるまで離さないよ」

「・・・やっ・・・待って」

「待たない」

腕の中でもがいていたけど、運動部出身の腕から逃れられるはずもなく。

すぐに大人しくなった。

下を向いているし前髪もあって良く見えないけど、顔が赤いのは分かる。

あー・・・幸せだ。

「・・・・・・・・・・たの」

「―――え?」

「一年の頃から好きだったの」

「ほんとに?」

腕を緩めて彼女の顔を見る。

俺の方は相変わらず見てくれないけど・・・真っ赤だ。

ダメだ!

やっぱり可愛い!!!!

だからもう一度腕の中に抱きしめた。

「俺もちゃん好きだから付き合ってください」

「はい」

今度は素直に頷いてくれたから、力いっぱい抱きしめた。



あれから荷物を取りに教室に行き、手を繋いで学校を出る。

しばらく歩いていると彼女が「ちょっと待ってて」とコンビニに入って行った。

俺はガードレールに腰掛けて、これからどうしようかを考えていた。

程なくして彼女が店から出てくると「はい」と何かを差し出した。

「さっきのは義理チョコだし本命チョコと思ったけど、もうこれしか売って無くて」

彼女の手にはハートの形のチョコレートが。

「あはっ!最高に嬉しい」

俺は彼女を抱きしめた。

さっきとは違って座ってる分だけ彼女を見上げる形になる。

だから今度は真っ赤な顔が全部見えた。

口移しでチョコを食べさせて欲しいと言ったら逃げちゃうかな?


2018/02/14