ハイキュー!!

東峰旭

キャラメル味のキスで

いつもデートの行先は私が決める。

の行きたいところで良いよ」

って、毎回花をバックに背負ってポヤポヤしてる彼氏に言われたらね。

けれど今回は私は鬼になります!

だった私も旭を喜ばせたいから。

だからデートの全てを任せるって宣言した。

そして翌日、目の前の彼はモジモジしながら怖い者を見る用にしている。

私を見下ろしてるのに。

「えっと・・・・映画が、見たい、です」

「映画?」

「あの・・・今やってる、カーアクションの・・・」

「あーワイルドなんちゃら」

「そう!それ・・・・・で、どう・・・かな?」

「・・・・・・いいよ」

そう言うとほっとしたのか、またバックに花が舞ってるのが見えた。

私が旭を好きなのは背が高いからとかじゃない。

このフワフワした雰囲気と見た目に反した優しさなのだ。

だから試合を観て驚いた。

普段の旭とまるで違うから。

いや、でも、ギャップ萌え?ときめいたけどね!!!

それは置いておいて、デート当日。

私の最寄りの駅で待ち合わせ。

旭は違う駅だから、彼がいるのは改札の中。

だから私はICカードを使って中に入る。

「おはよう」

「おはよう。じゃあ、行こうか」

いつもなら私から手を繋ぐけど、今日は彼に全てお任せ。

だから私から行動はしない。

一緒に並んでホームへの階段を上がる。

「それで昨日日向が・・・」

旭は何も感じないのかな?

いつも通り部活の話をしている。

滑り込んで来た電車に乗り、映画館のある駅へ。

「えっと・・・・・、サン。手、繋いでも・・・良いですか?」

何でこのデカイ図体はモジモジするのだろうか。

スパーンと行動しちゃえばいいのに、わざわざ聞くし。

「良いよ」って言ったら「失礼します」と言って手を繋ぐ。

いや、いつもと違って指を絡める恋人繋ぎだ!!

私達の関係と言えば、デートはするしハグもするけどキス止まりの関係。

だからこの繋ぎ方は・・・・・・なんか嬉しいけど恥ずかしい!!

少し前を歩く旭の耳も真っ赤だ。

きっと彼も同じ気持ちなのかな?と思って繋ぐ手に力を入れた。

映画館に着いてチケットを買うと、旭が飲み物とポップコーンを買ってくれた。

それを持って上映される部屋に向かう。

朝一番の上映だからなのか、人が少ない。

最近の映画館は小さくて種類があるから、私は一番後ろで見るのが好きだ。

それを彼も知ってるから一番後ろの真ん中に腰を下ろす。

少しして部屋のライトが落とされる。

スクリーンには警告から宣伝が流れて行く。

旭が持ってくれているポップコーンに手を伸ばし、二人でポリポリと食べる。

そして映画が始まった。

ストーリーは面白い。

カーアクションなのに途中に恋人とのイチャイチャがあって、なんか赤面した。

アメリカってなんていうか・・・色々オープンと言うか。

キス程度なら人がいても当たり前で恥ずかし気もない。

何となくガン見してるのも恥ずかしいから腕時計に目をやる。

1時間15分は経過している。

そろそろクライマックスに突入かと言う時だった。

右隣に座ってる旭が、私の右手を取って再び恋人繋ぎをしてきたのだ。

「え?」

思わず彼の方を見てしまうけど、彼は真っ直ぐスクリーンを見ていた。

くそーっ!何なんだ今日の旭は!!

何か悔しいから親指で少し手の甲を撫でてキュッと握り返した。

スクリーンでは次から次へとカーアクションがあり息もつかせぬ展開が続く。

そして最後に恋人との再会。

「愛してる」

字幕で見てるんだから日本語が聞こえるはずもないのに耳元に響く甘い台詞。

それを言ってるのが旭なんだと思った瞬間、スクリーンが見えなくなった。

何でだろう?って考える事も無く唇に感じる体温。

まるで映画の主人公になった様にキスされている。

「キャラメル味」

雰囲気をぶち壊す彼の首に腕を回してキスを強請った。



映画館を出ても繋がれ続けている手。

何だか今日の旭は男らしいけど変な感じだ。

「ねえ、今日はどうしたの?」

「えっ!?」

直立不動になって驚く。

「エーット・・・変じゃない、デス」

「・・・・・・・」

「ごめんなさい、嘘です」



から今度のデートは全て任せるって言われただろ?

だからあれこれ考えて考えて考えたけどイマイチ分からなくて悩んでた。

そうしたら菅原と大地が来てちょっと相談したら

「男らしくリードしてみせろって事だろ?」

「それって最後のデートじゃないの?ちゃんと好きだー!とか言ってる?」

「えぇー!?」

「それ、フラレるパターンだろ」

いつも任せだし?

もしかして呆れられた?

そう思ったら何か焦った。

そして三人でああでもない、こうでもないって話してたんだ。



と言うのを一気に話してくれた。

「・・・・・・あ、呆れた?」

「え?いや・・・」

「き、き、嫌いにならないで・・・欲しい、かな」

「嫌いになってないけど」

「ほ、ほんと?」

「うん」

「良かった・・・」

ほっとしてる旭。

ちゃんと好きでいてくれてるんだなと思ったら嬉しかった。

「ねえ、旭」

「ん?」

繋いだ右腕をぐっと後ろに下げると旭が私を見た。

だから思いっきり背伸びをしてキスをする。

「まだキャラメルの味する?」

「えっ!?あ・・・いや・・・あの・・・」

「??」

「えっと・・・俺の部屋で、確かめさせてくれませんか?」

「え?」

「あ・・・えっと・・・」

私は彼に並んで頭を肩に乗せた。

返事の代わりにピッタリ寄り添ってギュッと指に力をこめた。



2017/06/28