ハイキュー!!

及川徹

キスなんてただの束縛

ちゃん」

甘い声で私の名前を呼び、

意外としっかりした腕で私を抱きしめて、

甘い顔を近付けてキスをしてくる男を、及川徹と言う。



、今日一緒に帰らねえ?」

先週から彼氏になった君が違うクラスから来てくれた。

別に用事も無いし、良いよと返す。

すると隣から深い溜息が聞こえる。

その主の方を見れば頬杖をついて岩泉が私を呆れた顔で見ていた。

「何?」

「本当に別れたのか?」

「今の彼氏は君」

「腐ってるぞ、アイツ」

「元々じゃん」

「まあ、そうだけど・・・」

私は岩泉から視線を外す。

これ以上、及川の話はしたくなかったから。

高校2年になり、同じクラスで良く話す及川と付き合い始めた。

仙台で言えばイケメンの部類だし?

案外優しいし?それなりに面白いしで 付き合い始めた。

けれど彼の人気は他校にまで及ぶ。

正直、こっそりヤキモチを妬くのも限界だった。

「別れたい」

「えー!?何で!!!」

「飽きました」

「うそっ!!!!」

「じゃあ、そういう事で」

そうやって別れたのに・・・



「んっ・・・はぁっ・・・・」

誰もいない空き教室に連れ込まれ、何故かキスをされている。

「ちょっ・・・及川っ!」

「・・・とおるっ・・・でしょっ」

抗議しようにも力でかなうはずがない。

背中と両腕を壁に押し付けられ、キスを受け入れるしかない。

「戻って来なよ」

「イヤ」

「こうやってキスだけは受け入れてくれるのに」

「・・・・・・」

こうして連れ込まれるのは初めてじゃない。

別れた次の日に、その次の日にも・・・

けれど及川に抗う事が出来ない。

とは?もうキスした?」

「なっ!?」

「それとも・・・俺しか知らない場所には入り込めたのかな?」

体を密着させ、器用な右手が私のスカートを少しずつ捲って行く。

露わになっていく太腿を、及川の指がゆっくりと、くすぐる様に撫で上げて行く。

「逃げないの?」

「好きにすれば?」

「へぇ・・・良いんだ?」

「抱けば戻るとでも思ってるなら」

「・・・っ!!!!」

お願い。

私の言葉で傷つかないで。

お願いだから私に執着しないで。

私は及川徹の翼を捥いでしまうから。

「逃がさない」

そう言って重ねられる唇に、私は束縛されるのだ。



2017/06/28