DYNAMIC CHORD
Aventure~一夜限りの恋~
一華との時間は、ひっそりと甘くゆっくり流れて行った。
二人の関係は公にしていなかったから、結婚してた事を知ってる者は僅か。
彼女を失った悲しみを理解してくれたのは、一華の家族だけだった。
「私と仕事をしないか?」
そう久臣が仕事の話を持ち掛けて来たのは2年前だった。
10周年のKYOHSOの手伝いをし、今はフリーで活動している。
東京にいる間は久臣の所で世話になっていた。
「マネージャーがいないと不便だろ。何かあれば彼女へ言ってくれ」
「です、よろしくお願いします」
そう紹介して貰ったのがだった。
彼女は有能と呼べる人物で、俺と若手の掛け持ちだった。
特別美人でも可愛いワケでも無い。
けれど彼女は常に笑顔で綺麗だと思った。
「38.5…・・高熱ですね。ちゃんと寝ててください」
「……平気だ」
「あ、そのまま寝ててください。仕事しようと思ってるなら気絶させますよ?」
「……・・」
以前、何かの時に彼女が有段者なのだと知った。
「良い歳なんで自分の身は自分で守らないと」
そう言っていたのを思いだした。
「分かった。すまない」
「それじゃあ、鍵、預からせて貰います。仕事の帰りに寄りますので」
「ああ……」
返事をするだけすると瞼が重くなり、そのまま目を閉じて眠りについた。
夢を見るのは嫌いじゃない。
一華と会える唯一の方法だから。
けれど好きでも無いのは目が覚めた時に切なさが増すからだ。
ゆっくり目を開けると誰かが首に触れていた。
「あ、起こしちゃいましたか」
「……・」
ぼんやりした意識の中で彼女に触れてみる。
柔らかくて温かい。
そのまま彼女を抱き寄せる。
「一華……」
「……」
大人しく抱かれている彼女事体を回転させ、腕をついて見下ろす。
すると温かい掌が頬に触れた。
「まだ熱がある」
「構わない」
彼女の手を掴み、ベッドへ押し付ける。
顔をゆっくりと寄せて、唇を重ねる。
口紅はあまり好きでは無いが、そのまま舌を差し入れる。
ゆっくり舌を絡めあい、軽く吸い上げる。
「んぁ…」
甘い吐息が俺の口腔内をくすぐる。
そのままキスを首筋に移動させ、そのまま下へとずらしていく。
ブラウスのボタンを外しながら、露わになって行く肌へと舌を這わせる。
「んっ…・」
彼女の背に手をまわしてブラジャーのホックを外す。
露わになった頂にキスをして甘噛みすると、肩に手が添えられて押し返す様に力が込められた。
「ま、待ってっ!!」
「待たない」
「あぁっ!!!」
彼女の手を再びベッドへ押さえつけ頂を舐め上げる。
だんだん甘くなっていく喘ぎ声。
愛撫を続けて1つになる。
「一華…・」
キスをしながら腰を打ち付けれる。
首に、背中に回った腕が俺を抱きしめる様になった事が嬉しかった。
そろそろ絶頂が近いのか、顔を左右に振る姿が愛らしい。
「やぁっ…まっ…・・イクっ!!!」
彼女が駆け上がった同時に締め付けが強くなり、俺もそのまま彼女のナカに全てを吐き出した。
目が覚めたら腕の中に女性がいた。
一華では無いのは百も承知だ。
どうしようか迷っていると、腕の中の女性が目覚めたらしい。
俺はどう話をしていいのか分からないから寝たふりを決め込む。
すると首筋に手が添えられ「下がった…」と言った。
その声からするとさんだ。
けれどその手が離れていかない。
不思議に思っていると、親指が俺の皮膚を撫でる。
手が離れたと思ったら首筋にチクリとした痛みが走る。
「このくらい許してね、一華さん」
そう言って彼女は衣服を持ち部屋を後にした。
多分首筋には赤い点があるだろう。
俺は体を起こして彼女が出て行った扉を見つめる。
「すまない」
言葉と同時に玄関のドアがバタンと閉まった音がした。
2017/08/29