DAYS

君下敦

君が居るだけで

朝から電車に乗り遅れた。

練習しててもキックが思う様にいかない。

いつも練習後に駅まで送ってくれる後輩が休み。

他の後輩も車が車検や故障で無くて先輩に乗せて貰ったら愚痴を聞かされる。

食おうと思った定食が材料切れで食えない。

自主練しようにも新人ばっかで練習にならない。

何が言いたいかと言えば、一日中ツイていないって事だ。

一番最悪なのは恋人であるが飲み会でいないって事。

何をしてもツイてないからと早めに家に帰る。

ふて寝の様に眠ったのが悪かったのか、1時間で目が覚める。

「11時かよ・・・」

結局最後の最後までツイてないらしい。

充電器に差したスマホもランプすら付いていない。

「まだ帰ってないのか?アイツ」

元々マメに連絡して来る彼女ではないが、こんな日は「帰った」とか「おやすみ」だけでも欲しいと思う。

「マジかよ・・・」

自分がここまで凹むとは思っても見なかった事態だ。

それならばいっそのこと電話してしまおうか?

でもまだ飲んでいたら?もしかしたら寝てるかもしれない。

「あれこれ考えても仕方ねえ」

上着を持って家を出た。



彼女の部屋の前に立ち、音を立てないように合鍵でドアを開ける。

室内は真っ暗だけど、玄関には脱ぎ散らかしたパンプスがある。

「ったく・・・」

文句を言いつつ彼女の靴を揃え、その隣にジブンの脱いだ靴を並べる。

ワンルームの部屋はベッドの手前に目隠し代わりのチェストがあって彼女が見えない。

ベッドの傍まで行くと、掛け布団の上にうつ伏せに寝転がるがいた。

「・・・・・・あ、足が・・・」

見えてる。

と言うのもは元々サッカーをしてたらしく、俺の前で足を晒す事は無い。

部屋着でも長ズボン(今はやりのステテコ)を履いてたり、スカートを履いても長いしで絶対に足を出さない。

俺が目にするのは彼女を抱くときだけ。

けれど今は長めのTシャツしか着ていない。

「やっぱ綺麗じゃん」

それこそサッカーをしていた高校時代は筋肉質だったかもしれない。

けれど今は太く無く細すぎず、柔らかくて綺麗な足をしている。

「俺は好きだぜ、この足」

晒されている足をゆっくり撫でると、が向きを変えて仰向けになる。

飲酒のせいで暑いのかもしれない。

立てられた足。

晒された内腿に唇を寄せ、キツくそこを吸い上げる。

「ん・・・・・・」

が目を覚まさないように顔を上げると、白い足に浮き上がる赤い印。

自分だけが付けられる場所。

ふと顔を上げると月明りで時計が見え、日付が変わっていた。

「良し、寝るか」

の下から掛け布団を取ろうとしたら、彼女が目を開けた。

「ん・・・・あつ・・・し?」

「風邪引くだろ。良いから寝ろ」

「うん・・・・・・」

布団を掛けてやって隣に寝転がれば彼女の手足が絡んで来た。

無意識だからだろうけど滅多にない甘えてくる彼女を抱きしめながら眠りについた。


2018/04/17