ダイヤのA

結城哲也

宿題

高校3年にもなって宿題って・・・・・・

受験生舐めとんか!?

と言いたい所だけど授業は授業。

んーと唸っていたら隣から声がかかる。

「一緒にやらないか?」と。

一人でやりきる自信が無かったので2つ返事でOKした。

彼の家で宿題をする事になったので一緒に帰る事に。

「ああ、哲。今帰るところ?」

下駄箱から靴をおろし、上履きをしまう時に声がかかる。

声の主に視線を移せば、小湊君だった。

「ああ、彼女と一緒だったんだ」

「どうかしたか?」

「数学で課題が出たでしょ。純とかと一緒にやろうって話してて。で、哲を誘おうってさ」

「なるほど・・・」

「あ、私は良いよ」

「ああ、一緒にやる予定だった?なら皆で一緒にやればいいよ」

「「は?」」

小湊君は携帯を取り出し、どこかに掛け始めた。

「あ、純?OKだって。ああ、わかった」

ピッと軽やかな音を立てた携帯をポケットに仕舞い「もう来るって」と靴を履き替えた。

後から伊佐敷君と増子君も来て、5人で結城家に向かった。

彼の自室に入ると飲み物を取りに彼が退室してしまう。

私と身長が変わらないピンク色の人が私に向いた。

「ねえ・・・哲のどこが好きなの?」

「は?」「なっ!?」「うがっ!?」

私だけでは無く、伊佐敷君や増子君も彼を見た。

「だって野球バカの哲だよ?どこが好きなのか気になるじゃん」

「だからって直でいきなり聞くか!?」

「うんうん」

「だってすぐに哲が戻ってきちゃうじゃん」

「うっ・・・だからって・・・なあ・・・」

伊佐敷君と増子君の憐れむような眼と、キラキラと好奇心旺盛な小湊君の視線が痛い。

「どこと言われても・・・・・・」

その時に天の助け!

ドアが空いて、結城君が戻って来た。

「ああ、哲・・・。今さんに哲のどこが好きなのか聞いてたんだよ」

「そうか。で、どこだ?」

「「えぇーーーー!?」」

私と伊佐敷君の声が見事にハモった。

「ちょっと哲が知らないって、どういう事?」

「聞いた事が無いからな」

「ふーん・・・・・・で、さん、どうなの?」

「はぁ!?どうと言われても・・・うっ」

四人の視線が私に向く。

どこって・・・・・・

ん?

というか、何で彼等に言わないといけないんだ!?

「どこどこ?」「どこなんだ?」

別に近づいてきてはいないが、気持ち的には押しつぶされそうなくらいな気がする。

「あ!」

「「「「あ?」」」」

「宿題!そうだ宿題やりに来たんだ!ほら、みんなやろうよ」

「ちっ・・・そう来たか」
「え?(今舌打ちした?)」

「そうだ宿題やらないとな」

「うがー!」

みんな鞄からテキストを取り出した。

結城君がこっそり耳打ちしてくる。

「後で聞かせてくれ」

思わず耳を押さえて距離を取る。

視界に頬杖ついた小湊君が入り込む。

「ふふーん・・・」とばかりの顔だ。

あぁ・・・・・・何を言えば良いんだ。


キミの全てがいとおしい



2016/07/26