ダイヤのA

結城哲也

2.シャーペン

日曜の昼下がり。

せっかくの休日も受験生には関係ない。

むしろ「勉強たくさん出来るでしょ!」ってなる日。

3年になってから日曜って曜日が嫌いになりました。

なんとなく欝々とした気分だったから駅ビルに立ち寄る。

『秋冬コレクション 秋のデートコーディネート』

恋人いない歴=年齢の人に対して喧嘩を売っている文字。

彼氏がいればな~・・・こういう格好もするのに。

ジーンズにランニングに冷房対策のパーカー。

しゃれっ気も何もない自分が侘しい。

受験生らしく本屋と文房具屋が一体化している店に足を向ける。

参考書・・・では無く、漫画コーナーに足を向ける。

あ、新刊出てる!

数冊のコミックを片手に文具コーナーへ。

付箋のコーナーを見ると新しい商品が陳列されている。

『○○大学の学生が考案』

なんて言葉に乗せられて手に取る。

棚の裏側に回るとペンコーナー。

その一角に視線が止まった。

結城君が使ってたシ ャーペンだ!!!

そこに手を伸ばして止まる。

まてよ?

何色にするんだ自分!!!

同じ色じゃ使えない。

そもそも隣の席だから使いづらい!

ならば違う色なら!!!

でもでも!どうせだった同じ色の方が!?

様々な理由が脳内を駆け巡り、30分後に同じ色を手にしてレジに並んだ。

家に帰ってシャーペンを取り出す。

はぁぁ~~~~~~。

買ってしまった。

結城君とお揃い。

いや、全国に何人もいるだろうけど脳内でその方たちは削除した上で「お揃い」。

なんだか嬉しくて、思わず両手でシャーペンを握りしめた。




数日後、結城君の席には野球部の面々が。

「あ、。シャーペン貸してよ」

ピンク頭が声を掛けて来た。

「?良いけど・・・はい」

ペンケースの横にあったシャーペンを差し出す。

が、受け取らない。

「これじゃなくて違うヤツ」

「これでも書けるけど?」

「知ってる」

彼はニヤニヤとしている。

すると結城君が「何か違いがあるのか?」と声を挟んで来た。

コイツ!

「小湊君?ちょっとお話があるんだけど!!」

そして腕を掴んでまた廊下に出た。

「ねえ、そろそろこの呼び出し止めない?」

「私をからかうの止めてくれたらね」

「無理な注文だねぇ」

「なんで!」

「何が?」

「色々!!!」

「シャーペンの件だったら見てたから」

「は?」

「30分くらい数本のシャーペン握りしめて選んでたのを」

「げっ!」

「ほんと、楽しませてくれるよね」

そしてまた彼の背中を見送った 。



夜になって小湊君からメール(メアドは後輩君の携帯らしい)が届いた。

『からかってるお詫びに哲のシャーペンと入れ替えておいたよ』

私は携帯を放り投げペンケースからシャーペンを取り出す。

まじまじと見ると本体に傷らしきものが。

私はハンドタオルを出し、そのシャーペンを拝んだ。

ついでに青心寮方面にも拝んでおいた。




2016/05/16