ダイヤのA

伊佐敷純

最後の恋

大学を卒業して会社員として就職。

同期の中の一人と付き合う事になった。

半年以上の尽き合いになり『結婚』を意識するようになっている。

週の半分をどちらかの部屋で過ごしていて、どちらの家にも困らない衣服もある。

今日は俺の家にいて、先ほどまでベッドで何度目かのセックスをしていた。

今は互いに裸で抱きしめ合っている状態だ。

何度か髪を梳いていると、彼女の目が閉じられる。

息遣いが穏やかになった。

そろそろ寝たか?

本当に無意識に言葉が出ていた。

「お前の初めての男って、どんなヤツだ?」

自分にだって過去があり、が初めてなワケでは無い。

相手は同級生で 緊張していて細かい事まで覚えていない。

それこそ名前も思い出せないくらいだ。

だが、女性の初体験は鮮明に覚えていると聞く。

なんとなく過去の男が気になった。

「純・・・・・・デリカシー無さすぎ」

気付けば彼女の目が開いていて、体を起こす所だった。

ベッド下に転がっている俺のTシャツ着て、俺を覗き込む様に体を倒した。

「急にどうしたの?」

「ん?別になんもねえし」

「嘘」

「いや、マジで」

「・・・・・何かした?純を不安にさせる事」

「してねえって」

俺をじーっと見てくるが、俺は思わず視線を外す。

するとが「やっぱり嘘」と呟いた。

「わかったわかった!だから落ち込んだ顔してんじゃねえよ」

「じゃあ、何?」

「自分の幸せ考えてたら、の最初のオトコに行きついて気になって仕方ねえんだよ!」

「バイト先の人だよ」

「やっぱり覚えてんのか」

「まあ、そのくらいは」

「どうだった?」

「なにが?」

「色々」

「こんなもんか~ってカンジだった」

「それだけ!?」

「そういう純はどうなの?男の方が引きずるって言うし」

「同級生だった」

「じゃあ、同窓会とかで会うんだね」

「はぁ!?」

するといきなりは俺に背を向けて寝の体勢になる。

さっさと布団を掛けて目を閉じた。

「いやいや、ちょっと待てって!寝るな!!!」

「・・・・・・」

「なんか怒ってるだろ!?」

「純のデリカシーの無さにね。反省しろ!おやすみ」

そして俺は寝る事も出来ず、ベッドで頭を抱えるハメになった



2016/06/09