ダイヤのA

真田俊平

お姫様抱っこ

この間のバレンタインで告られ、同じクラスだったと付き合い始めた。

と言っても俺は野球三昧で、デートらしいデートなんてした事が無い。

同じクラスだった時は会話をする事もあったが、クラスが離れた今、喋る事も無い。

授業の合間、寝る前にLINEでメッセージのやり取りをする程度。

俺達が付き合ってるのを知ってるヤツラの方が少ないだろうな。

特別美人でも可愛い訳でも無い。

何でOKしたかと聞かれたら「なんとなく」と答える。

彼女を好きになる切欠が少ないのだ。

けれど俺が練習三昧でも文句は言わないのは良い所なんだと思う。

「俊平!お前、何に出んの?」

「野球出れねえからサッカー」

もうすぐゴールデンウイークに突入すると言う平日、球技大会が行われる。

部活に所属してる者はその競技に出れないのでサッカーを選んだ。

そしてもサッカーを選んだらしい。

試合が始まるのでグランドに行けばが試合をしていた。

「あ、2年のじゃん。ラッキー」

と言うのは1学年下の可愛いと評判の女生徒だ。

去年スカウトされて芸能界入りしたとか何とか。

「あー三年の6番着てるのは?」

「いや、知らねえ。スタイル良くね?」

(おいおい・・・・・・)

彼等が話してるのはの事だ。

確かに制服姿しか知らなかったけど・・・・・・スタイルは良さそうだ。

その瞬間だった。

2年の生徒とボールの取り合いの後、その生徒の足が引っかかりがコケた。

ホイッスルが鳴り、がメンバーチェンジとなる。

どうやら膝を思いっきり擦りむいたらしく、友人に支えられながら座り込んだ。

俺はそこへ向かう。

「え?真田君?」「なんで真田が」

周りの女生徒が驚いている。

彼女の横にしゃがみ、膝を見ると。

「血だらけじゃん。保健室行くぞ」

「え?あ、うん」

、立て・・・・・・・え?」

「きゃあっ!?」

「きゃーーー!!!!」「うそーーー!!」

と声が上がった。

俺がを抱き上げたからだ。

「ちょっ!俊平君!?」

「暴れても落とす気ねえけど、大人しくしとけって」

「でも!」

「恥ずかしいなら俺にしがみついとけ」

「あ、歩ける!」

「いいから」

するとはおずおずと俺の首に手をまわしてきた。

肩口に額を押し付け、顔を隠している。

柔らかな体が密着する。

男としては・・・・・・複雑だ。

柔らかい胸が当たる。

熱い吐息が掛かる。

柔らかな足。

何度か彼女の膝を見て理性を取り戻す。

「盛大に擦りむいたわね」

保健室の先生が消毒液とコットンを持って手当をしていく。

ガーゼをあてると傷も乾かないからと、スプレータイプのもので仕上げる。

「「ありがとうございました」」

礼を言って部屋を出る。

ヒョコヒョコと歩くが痛々しくも可愛らしい。

「もう一回抱き上げようか?」

「いい!限界!」

「限界?」

「心臓バクバクで・・・」

「はっはっはー真田先輩はっけーーーん」

「ん?ミッシーマ?」

「今日は俺もサッカーで・・・・・・あ」

「ん?」

「し、しししつれいしましたーーーー!!!!」

高笑いしてたと思ったらいきなり頭を下げて走り去って行った。

ああ、を見てか。

彼女を支えるために、彼女の腰を抱くようにする。

「抱き上げんのダメなら、これくらいな」

「こ、これでも恥ずかしい」

「あー・・・だめだ」

俺は体を動かして彼女にキスをする。

ただ重ね合わせるキスをして彼女を見ると、真っ赤になって驚いている。

「すげー可愛い」

それだけ言ってまたキスをする。

長めのキスだからバランスを取るために彼女の手が俺の腰に回る。

それもまた気分が良い。

「・・・でさ~、っきゃあ!」

声がした方を見ると真っ赤になっている女生徒二人が俺達をみて、俺と目が合ったら走って行った。

「あ・・・見られた」

「恥ずかしい!!!」

「まあ、いっか。んじゃ戻るか」

そして俺達の事は、放課後になる頃には知れ渡っていた。


2017/04/22