ダイヤのA
ねえ、わかってる?
近くて遠い『幼馴染』。
それに恋愛が絡めば尚更だ。
もしかしたら近くにいるから恋愛対象になったのだろうか?
そんな疑問も生まれる。
だらか私は距離が置きたいと思っていた。
鳴の性格から、そんな事が不可能なのも理解している。
その矢先に鳴が稲城実業に進学し寮に入ると言った時に安堵した。
これで鳴との距離を作れると・・・。
そして私は都立高校へ入学が決まった。
入寮した鳴から、メールが届く。
正直、拒否したい。
一度返事を返さなかったら、その翌日携帯が鳴る。
これで声を聞いたら意味が無いからと放置したら家に電話が来た。
そして散々文句を言われたので、メールはほどほどに返事をする様にした。
二か月もすれば鳴からのメールも減った。
どうやら雑誌などでも注目され、甲子園行きも決めた様だ。
見に来いと言われたけど、自分にも部活があるから無理と返事を返す。
逆鱗に触れたらしく、しばらくメールが届く事は無かった。
朝のニュースで鳴の特集が組まれていた。
家族はそれを良く見ていたが、私が目にしたのは1度だけ。
最後に会った時よりも大人びて、背も伸びて別人の鳴。
しばらくして稲実が負けたと聞いた。
だからと言って私が何か出来るワケがない。
負け試合から10日、久しぶりにメールが届く。
『お疲れ様も慰めも何もないって冷たくない!?』
「慰めて貰わなきゃいけない試合したの?」
『そんなワケないじゃん!!最近のって冷たいよね』
「はいはい」
やり過ごせたと思った。
年末に鳴が帰省し、私の態度の変化を問い詰めてきた。
「彼氏が出来たから」
そう告げれば目を見開いて驚く鳴がいた。
そして一瞬悲しそうな顔をして、「もう良い!」と部屋を出て行く。
時間が経てば、また鳴と笑い合える。
この時の自分は、そう思っていた。
私にも彼氏と呼ばれる存在が出来たが、長続きはしなかった。
どこかで鳴と比べていて、落ち込んでいる自分がいる。
ただただ、私は鳴が好きなんだと自覚するだけ。
高校三年の秋。
受験戦争真っ只中。
そんな時に事件が起きた。
私はまだ大学が決まっていなくて、先生と話を生徒指導室でしていた。
終わって部屋を出ると、学校中の女生徒が慌ただしく動き回っている。
「???」
そんな女生徒を横目に教室に戻る。
だけど足を踏み入れる事が出来なかった。
「あー!やっと帰って来た」
私の席に稲実の制服を来た鳴がいた。
「なっ・・・」
「おばさんから伝言預かっててさ。とりあえず帰る支度しなよ」
「ってば成宮君の幼馴染だったんだ!」
「え?」
何故それをクラスメイトが知っているのか。
鳴の方を見れば、怒りを抑えているのが分かる。
私は急いで支度をし、鳴に腕を引かれて学校を後にした。
無言のまま駅に向かい、電車に乗り込む。
私をドア付近に追いやり、鳴がすぐ横に立つ。
昔には無かった身長差。
それを実感する間もなく、鳴が耳元で囁いた。
「そろそろ理解した?」
「な、何を・・・」
「が俺以外を好きになる事は無いって」
「!!!?」
「二年半も距離を置いてあげたんだし?もう他のオトコはいらないよね?」
恐る恐る顔を上げれば、今にもくっついてしまいそうな距離。
鳴がニヤッと笑ったと思ったら、唇に感触が。
すぐに離れたと思ったら、腰を抱かれた。
「人の目もあるから、今はこれだけ。後でちゃんとしょうね♪」
そしていかにも「ウッキウキ♪」って足取りの鳴と手を繋いで帰った。
2016/05/25