ダイヤのA
決めた、今日から俺の彼女ね
朝起きてご飯を食べて、
制服を着て学校に行き、
眠くなる授業で欠伸を堪えつつ、
昼休みに談笑してまた授業。
放課後にどこか遊びに行くか家に帰るかで迷い、
夕飯を食べてお風呂に入って寝る。
退屈な毎日を過ごしていた。
今日、この日、この時間までは。
「さん」
友達とお弁当を食べていると真横に人が立った。
名前を呼ばれたので顔を向けると胸元で、視線を上げていく。
そこに立っていたのは『都のプリンス』と呼ばれる人。
「俺と付き合ってください」
そのセリフに周りが色めき立つ。
私は一生懸命脳内のCPUを稼働し、答えを導いた。
「・・・・・・・・・どこに?」
「俺『に』って言ってないじゃん!!」
「・・・・・・あ」
「ちょっと来て!!!!」
手首を捉まれたと思ったら引かれ、私の足が机に引っかかりながらも立ち上がる。
そして腕を引かれ、教室を後にした。
連れて行かれたのは人気の無い寮に近い場所。
「俺と付き合って」
「それって男女のお付き合い的な?」
「そう!手を繋いでキスしてエッチする付き合い!!!!」
ストレートすぎる表現だろ!!とかツッコミを心で入れる。
そもそも何で私なのだろうか。
「もしかして・・・彼氏いたりする?」
「いや、いないけど・・・」
「じゃあ好きなヤツがいる?」
「それもいないけど・・・お付き合いはできません」
私は一礼をしてその場を後にする・・・・・予定だった。
成宮君に腕を掴まれ、また彼と向き合った。
「それならお試しで良いから俺と付き合ってよ」
「いやいやいや。それこそ可愛い子が他にもいるし、そっちにお願いした方が」
「何を?」
「彼女役」
「ちっがーーーう!俺はが好きなの!だから付き合いたいの!」
「はぁ!?」
「もういいや。今日からは俺の彼女ね」
「何を勝手に」
「もう決めたの!良し、じゃあ戻ろう」
手首でも腕でも無く、掌を合わせる様に手を繋ぐ。
手を引かれながら彼を見た。
言動は幼いけど背は高い。
肩幅もあってウエストが締まってる(羨ましい)。
繋いだ手は大きくて、私の手をすっぽり包み込んでいる。
彼を意識しだしたら、現状が物凄く恥ずかしくなった。
今までは遠い芸能人の様だった『都のプリンス』が、
私を好きだと言って迫ってくる。
可愛い系かと思えば逞しい男の人で・・・・・・
思わず繋いだ手に力が入った。
成宮君は足を止め私を振り返りニヤっと笑った。
「顔、真っ赤だよ・・・ぷぷぷっ」
私は空いている方の手で、自分の顔を隠した。
2016/8/19