ダイヤのA
校則違反
結城君と付き合い始めて一か月が経過した。
特別変わった事も無いが一緒に帰る(駅まで送って貰う)事はしている。
友人には羨ましがられ、彼を好きな人からは睨まれる日々。
もちろん小湊君には、からかわれる日々でもある。
結城君の関係で野球部の面々とも認識が出来、尚更だ。
私の受験がまだ終わらないのもあり、デートらしいデートもしていない。
そして11月になり、私は無事推薦で大学が決まった。
合格祝いを兼ね、初デートとなる。
待ち合わせは大きな駅。
予定より早い電車に乗れた。
この分だと早めに着くから駅ビルの本屋で時間を潰そうと改札を出る。
すると柱に寄りかかる結城君が既にいた。
「おはよう。あれ?私時間間違えたかな?」
声を掛けると彼の首が動き、私を捉える。
すると綺麗な目が見開かれ、口元を手で覆い隠した。
「あ・・・いや、俺が早過ぎただけだが・・・・・・」
「だが?」
口元を覆っていた手が、目の辺りに移動する。
「・・・の私服姿を初めて見たから・・・・・・」
いやいや、それは私もです。
今日はスポーツを楽しむって言ってたのでジャージ素材のロングスカートにした。
なんとなく最初のデートにズボンって言うのもイヤだったので。
結城君はジーンズにTシャツ、少し厚手のフリースを着ていた。
洋服を着ていても分かる体格の良さ。
二人で照れ合ったあと「行くか」と言われ手を繋いで歩く。
向かったのはフポーツの複合施設の様な場所。
一緒にボーリングをして、バッティングセンターに。
その後にダーツを楽しんで夕飯を食べた。
目的も無く駅までの道を歩いていると、結城君が立ち止った。
「まだ時間平気か?」
「あ、うん。大丈夫だけど」
「そこに・・・入らないか?」
「え?」
見上げた先はネオン輝くラブホテル。
いつかは訪れると分かっていた。
お互い未成年の実家暮らしだし・・・
彼に近づきたいとも思っていた。
色々頭の中で考えている途中だったのに、私は頷いていた。
手を引かれて入った建物。
部屋の写真が沢山並んでいて「どれが良い?」なんて聞かれても困る!
部屋のキーを取り、エレベーターに乗り込む。
鍵を開ける音が生々しい感じがする。
部屋に入って荷物を置いた瞬間、抱きしめられた。
「ずっと触れたかった」
優しい声が耳元で響く。
恥ずかしくて何も言えない代わりに、彼の背に腕を回すと更にぎゅっと抱きしめられる。
「今日一日押さえるのに苦労した」
そのセリフに思わず笑ってしまった。
すごくしっかりしてるし大人びた印象の彼が、
私と同じ年齢なんだと思えたから。
だから安心して彼に身を委ねた。
ホテルから出る時になって。
こんな所を見られたら先生に怒られたり推薦取り消しにならないのかな?って思った。
2016/06/20