ダイヤのA
ふたりで感じた世界の全て
「何が足らない?」
私の背中には本棚、目の前には真田がいる。
その彼の左手は私の腰の辺りの棚に、右手は肘からが本棚についてる状態。
足元には肩から落ちた膝掛(ずっと座ってると冷房で肩が冷える)がまとわりついている。
これも『壁ドン』なのだろうか?
「返事が無いなら、このままキスするけど?」
返事と言われても・・・
何をどう言えば良いのかわからない。
まずは状況を整理しよう。
真田と私は同じ中学出身だ。
私は中学の頃から彼が嫌いでしかない。
彼は野球部で、まあイケメンと呼ばれる部類の人。
だからなのか常に女の子が周りにいた。
同じクラスになった事も無いし、接点も無い。
だから噂話での判断になるが、とにかく『彼女』が途切れない。
同じ学校に他校に年下に年上に・・・噂が絶えない人だった。
正直嫌いなタイプ。
乙女チックと言われようが、私は誠実な人が良い。
私だけを好きになってくれる人が。
そして自分も、その人だけを愛したい。
けれど私が片想いしてた人には彼女が出来てしまった。
伝えなかった自分の愚かさには目をつぶった結果だ。
だから進学先に選んだのは、想い人が選ばないであろう学校。
そして私はこの判断を後悔する事になる。
2年前の薬師高校入学式。
「あれ?・・・だっけ?」
名前を呼ばれて振り返ると、真田俊平がいた。
「違ったっけ?同中だよな」
「はあ・・・」
「これから3年間、よろしくな」
ここで返事をした事を本当に後悔した。
時間を戻して受験先を・・・いや、ここで『違う』と言えるところまでで良い。
過去を遡りたい。
ささやかな願いも虚しいものになる。
あろうことか同じクラスになった。
そして何かと話しかけてくる。
相変わらず彼の周りには女の子がいたし、彼女達の視線が痛い。
「私に話しかけないで」そう告げた事もある。
理由を聞かれて正直に話すと
「俺は俺の意志でと話したいから無理」と一刀両断された。
それから、彼から話しかけられる機会がより一層増えた気がする。
「あんな風に拒否られたの初めて」
「って良いヤツだな」
これだけ冷たくあしらっているのに良いって評価が付くって・・・
彼はどんな交友関係をしているのか謎だ。
だからと言って知りたくも無いけど。
極め付けが二年の時(また同じクラス)「俺と付き合わねえ?」だった。
「チャラくて不誠実で不真面目な人は嫌いだから無理」
私にしては言った。言い切った。
自分ではかなり満足な理由だと思ったし、言いたい事も言えてスッキリもした。
「へえ・・・は真面目で誠実なのがイイんだ」
口の端を上げ、白い歯を見せてニヤリと笑った。
そして私を指差し「覚悟しとけよ」と言い捨てた。
三年になるとクラスが離れて私はガッツポーズをした。
その喜びも一瞬の事。
ノートや教科書を借りに来たり、用が無くても来たり。
私が図書委員長をしているのもあって図書室に入り浸っているが、
トレーニングの度に来たり・・・・・・
そして携帯を差し出され、電話帳を見せられた。
女の子の名前が身内とかしか無いと証明する為に。
昔に比べたら野球も真面目にやってる。
噂では故障したとか何とか・・・。
でもそこに触れると勘違いされそうだから言わないし聞かない。
去年学校全体で決勝戦の応援に強制的に行ったから、
彼がどれだけの選手なのかも理解した。
図書室から見える練習風景でも、彼が真面目に取り組んでいるのも分かった。
そして冒頭に戻る。
「早く返事」
「返事って・・・」
「チャラチャラしてないし?不誠実もやめた。真面目に・・・部活はやってる」
「まあ・・・って言うか近い!」
「他に何が足りない?近いのはキスする為だから仕方ないって」
「私の気持ちは!?」
「だから足りないのは何か聞いてんじゃん」
「足りない・・・・・・あれ?」
思い当たるものが無い事に気が付いた。
それに私に対する気持ちも聞いている・・・というか行動で示されてる?
じゃあ、私の気持ちは?
まずい・・・・・・
色々と自覚しだしたら現状にドキドキし始めた。
「すっげー顔、真っ赤」
状況を理解する前に彼が行動を起こしてしまう。
自分の手で顔を隠す前に彼の掌が私の頬を覆った。
俯こうとした顎を指で掬われ上を向かされる。
「すっげー可愛い」
囁きと共に唇がそっと塞がれる。
1秒なのか10秒だ ったのか ・・・時間なんか分からない。
リップノイズと共に離れた唇。
「さなっ」
「やべぇ・・・とまんねえわ」
再び重なる唇。
先ほどとは違い、押し付けられる様な感じだ。
僅かに開いていた唇の合間から入り込んでくる舌。
歯列をなぞられ、上顎を撫でられ、舌を絡ませてくる。
「んっ・・・ふっ・・・」
互いの吐息と水音が耳に響く。
酸欠なのか、彼に酔わされてるだけなのか・・・クラクラしてきた。
「んんっ・・・」
唇が解放された瞬間、首筋にキスされる。
同時にいつの間にか入り込んだ掌が私の胸を覆った。
首筋を舌で撫でられ、ブラのホックが外された。
「もう、固くなってんじゃん・・・」
左手で胸を触り、右手でブラウスのボタンを器用に外していく。
舌が首筋から鎖骨に。
チクっとした痛みが何なのか理解する前に両胸に刺激が加わる。
「あっ・・・」
「気持ちいい?」
自分の手の甲で口を押え首を左右に振る。
真田は関係なしに私の胸の頂を舐めた。
「やあっ・・・」
「んっ・・・ちゅっ・・・・・・」
行為自体は勿論、初めての色恋沙汰だから分からないけど、
水音が物凄く羞恥心を煽ってる気がする。
自分がこんな音を出すほどなんて知りもしなかった。
「まっ・・・まって・・・さなだっ・・・」
「ん~?」
彼の頭を剥がそうとするも、力が入っていないからか剥がれない。
行動はエスカレートしていき、彼の手が太腿を撫でた。
そしてショーツに指がかかり、そのまま下げられる。
彼の唇がやっと胸から離れ、視線が交わる。
「いやっ・・・ここ、がっこっ・・・」
「しーっ・・・んっ・・・」
声を出させない様になのか、再び唇が重なる。
内腿を撫で上げられ、彼の指が私の下腹部をまさぐる。
「んーっ・・・」
「とりあえず俺の首に捕まって」
「やだっ!」
「頑固だな~・・・コッチはすっげ~濡れてんのに」
これから彼を受け入れるであろう場所を指が行ったり来たり。
わざと大きい水音を立ててくる真田を睨む。
「我慢してる顔も、そそられんだよな~」
「うっ・・・」
するするっと長い指が入ってくる。
初めての感覚。
真田の肩に置いた手に力が入る。
「すっげー締まった」
「・・・・・・っ」
「動かすよ」
「んんっ・・・」
頭を彼の肩に乗せた。
「どこが気持ちいい?」
耳元で囁く声が憎たらしく感じる。
彼の指は私の中で縦横無尽に動いていて、真田に何か言われても答えられない。
「あっ・・・」
一点を指が掠めた瞬間、体がビクっと反応した。
「ここ?」
「んんっ・・・」
更に刺激を加えられ、私は頭を左右に振る。
それでも刺激は止まらない。
「あぁっ!!!」
無意識に頭を上げると、首筋に吸い付かれ、その途端頭が真っ白になった・・・
体の力が抜け、崩れ落ちそうになると抱きかかえられた。
私の体に彼のジャージが掛けられ、ゆっくり押し倒される。
足の間に彼の体が入り込むけど、抵抗する力は無かった。
カチャカチャと金具の音がして、足をグイっと開かれる。
彼の体が倒れこんできて、耳元で「射れるよ」と声がした。
「・・・・・・」
グッタリしている私にまだ何か強いるのか?
視線で訴え掛けても「ふっ・・・」と笑って終わった。
足を抱えられ、指とは比べ物にならない質量がゆっくり入ってくる。
私は目を閉じて痛みに耐え、顔を背ける。
「くっ・・・」
「」
優しい声が私の名前を呼ぶ。
目を開けると彼へ恨めがましい視線を送る。
「いたっ・・・・・・」
入り込んでくる質量と比例する様な痛み。
「深呼吸して」
「・・・むっり・・・・・・・」
「力抜いた方が楽なんだけどな」
目頭に浮かぶ涙を長い指が攫って行き、優しいキスが何度も降ってくる。
キスに意識を持っていかれた瞬間、更なる激痛に襲われた。
あまりの痛さに死ぬんじゃないかと思った。
「い、いやーー!」
「全部・・・入った」
キスが唇だけじゃなく、頬に、額に、目尻に落とされる。
その後に重なった唇から、しょっぱい味がする。
それが自分の涙の味だと気付いたのは、終わってからの事だった。
「肩、噛みついていいから」
言い終わりと同時に律動が開始される。
ゆっくりと・・・
そしてまた体がビクビクってなる場所を掠めて来た。
「くっ・・・激アツ」
真田の眉が寄る。
「余裕ねえわ・・・早くするぞ」
「初心者に・・・あっ・・・んーーー」
早い速度で突き上げられる。
さっきとは違い、またあの一点を責めあげられる。
室内に水音と、私の肩に押さえつけた声が響いた・・・
本棚に背中を預け、座り込む真田の足の間に私がいる。
兎に角疲れた・・・
半身を彼に預けている状態で背中を撫でられている。
それが何だか心地よくて目を閉じる。
彼の上下する胸が心地いいなんて、相当疲れてる。
彼だって練習があるだろうけど、今の自分は相当ヤバイ。
「あのさ・・・今更言うのもなんだけど」
私は体をずらし、彼の腰に腕を回す。
そしてチュっとキスを落として彼の肩に頭を乗せた。
「10分寝かせて・・・」
それだけ告げて目を閉じる。
起きて部活が終わってからゆっくり話をしよう。
彼の努力を認めている事、そして好きになってしまった事を。
そして私は意識を手放した。
「はぁ・・・・・・」
彼女をぎゅっと抱きかかえ、溜息をつく。
今まで彼女も体を重ねた女も沢山いた。
本当ならもっと優しく抱いて、どろっどろに甘やかしてやりたいのに。
彼女を見ていて気持ちも体も止まらなかった。
こんな事は初めての事だ。
いつだかミッシーマが「遅い初恋は~」なんて言ってたのを思い出す。
初恋ねぇ・・・・・・
過去を振り返ってみる。
・・・・・・・・・初恋なのか?
が自分を見ていない事に苛立ち、
他の男と歩いていれば腕を引いて自分の腕の中に・・・
ん?これって嫉妬で独占欲ってヤツか?
落としに行ってたはずなのに落とされたのは自分かよ。
「そろそろ10分か・・・」
寝顔を見ていたいけど、起こさなかったら怒るよな~。
体をずらして彼女の鎖骨の上にキスをする。
キスっつっても思いっきり吸い付いて跡を残す。
丁度ブラウスで見え隠れする部分だ。
こんな後を残すくらい、彼女を好きになっている。
「手放さねえから覚悟しろよ?」
唇にキスをすると、ゆっくりとの瞳が開かれた。
2016/07/13