ダイヤのA

成宮鳴

独占したい独占されたい

「きゃー!鳴くーん!!」

グランドにいて聞こえる掛け声。黄色い声援とも言う。

毎日毎日聞いていても飽きない。

でも一番好きなのは彼女の声なんだけど。

「かーみやー」

聞えて来た彼女の声は俺じゃなくてカルロスを呼ぶ。

それに気付いたカルロスが彼女へと走り寄る。

言葉のやり取りをして、二人で並んで歩き出した。

「朝練の最中にどこ行くの!」

「ああ、鳴。昨日提出のプリントがあるんだよ」

「おはよう、鳴」

「何でカルロスより後なの!?」

「下らないヤキモチだな、鳴」

「え?ヤキモチ?」

「違う!!」

「相変わらずお子ちゃまだな。まだ童○かよ」

「朝から何言っちゃってんの!!」

「練習あるんでしょ?早くしない?」

「ああ、悪い。じゃあな、鳴」

「じゃあね」

と、二人は俺を置いて行った。




昼休み。

食事を終えた彼女と一緒に屋上に上がる。

最上級生になった今、怒る雅さんもいない。

壁に寄りかかり座る彼女の足に、自分の頭を乗せた。

「どうしたの?」

そう言いながら俺の髪を細い指が撫でる。

心地よさに目を閉じて「別に?何も」と答えた。

「何もって顔じゃないじゃん」

彼女の声は怒りを含んでいないのは分かった。

分かってる。

彼女には俺の感情なんて見透かされてるって事。

同じ歳なのに・・・なんかムカツク。

すると背後からクスクスと笑う声が聞こえる。

「ねえ、本当に妬いてるの?」

「だったら悪い!?」

こんな言い方をしたら自分の子供っぽさをアピールしたのも同じじゃん!?

分かっていても感情が追い付かない。

そんな感情をなだめる様に動く彼女の手。

「悪くないけどね。むしろ嬉しいし」

「嬉しいって何!?こんなイライラすんのに!!!」

彼女の足から体を起こして後ろを向く。

驚いた彼女の顔が見える。

けれどすぐ、ふわっと笑った。

「だって、ヤキモチ妬くのは私の専売特許だと思ってたし」

「はぁ!?いつ誰がどこで妬いたのさ!!!」

「知らない女の子が鳴の名前を呼ぶ度。神谷が呼んでも嫌。御幸君なんて私の最大のライバルかも」

「はぁ!?男じゃん!!!!」

「それでも嫌なの」

彼女の手が頬に添えられ、彼女の顔が近付いて唇が重なる。

伏せられた長いまつ毛。

彼女の首に手を当てて固定し、主導権を取り返す。

角度を変えて、何度も何度も唇を重ね、舌を絡ませる。

でも妬くんだ」

「鳴より独占欲強いかもよ?」

「そのまま嫉妬しててよ」

「なんで?」

「それだけ俺の事が好きって事じゃん」

「えー」

「俺も嫉妬しまくるからさ」

「心狭いカップルだね」

「別に良いんじゃん?他と違ってさ」

「まあ、いっかな」

彼女の腕が俺の首に回って来たから腰を抱き寄せて、再びキスをかわした。

2017/05/18