ダイヤのA

結城哲也

1.遅刻

高校三年の夏。

考える事は進路の事・・・だけじゃなく恋愛も。

1年の頃から格好いいな~って思ってたけど、

同じクラスになれた3年で完全に彼に恋をした。

真面目で、誰に対しても平等で、自分にも他人にも厳しい人。

一生分の運を使ったらしく、この間の席替えで彼の隣になった。

良く部員の人が集まって話す機会は無いけれど、

そんな彼が時折見せる「ふっ」って優しく微笑むのが好きだ。

そして昨日の夕方、帰ろうと思ったら小湊亮介君とすれ違った。

その時に「って、哲が好きなんだね」って囁かれた。

彼はそのまま行ってしまったけど、私はしばらくフリーズしてた。

気が付いたら家にいて、頭の中はグルグル。

そんなに分かりやすい行動してたのかな!?

結城君にもバレてる!?

考えだしたら眠れなくなって・・・・・・寝坊した。

家から走って走って走りまくった!

教室に駆け込む寸前、担任の先生が教室のドアを開ける所でセーフ。

無事にホームルームが終わって机に突っ伏した。

まだ息が整わないのは、やっぱり運動不足なのだろうか?

「珍しいな、が遅刻寸前なんて」

声が掛かると思わなかった。

彼の声で発せられた自分の名前に驚いて「え?」と顔を上げる。

あ、ヤバイ・・・あの微笑みだ。

「目覚ましが壊れたのか?」

「いや、昨日の夜眠れなくて・・・」

「何を考えてたの?」

って、元凶の声が!

私は立ち上がって彼の腕を取り「ちょっとお話が!」と彼を廊下に連れ出した。

階段の奥にある特別教室の前で小湊君と向き合う。

「そんなに私ってわかりやすいのかな・・・」

「眠れないくらい気にしてたんだ?」

「めちゃくちゃ」

「へぇ」

「うっ・・・・・・」

小湊君の顔は面白くて仕方がないって顔してる。

あ~~~厄介な人にバレてしまった。

「多分哲は気付いて無いよ」

「本当!?」

「他の人も含めてね」

「そっか・・・良かった」

「何で?」

「え?」

「バレた方が哲と付き合えるかもしれないのに。というか告白すれば?」

「無理無理無理!」

ってマゾ?」

「違う!」

「・・・・・・」

「え?マゾなのかな?」

「あははは!まあ、どっちでも良いけど。そろそろチャイムなるからまたね」

「または遠慮します」

あー・・・これからもからかわれるのだろうか?

ため息交じりに彼の背中を見つめ、自分も教室に向かった。



2016/5/13